2021.07.29 【半導体/エレ商社特集】エレクトロニクス商社ソリューション事業強化へ

製造業向けなどソリューション事業を強化するエレクトロニクス商社

車載、情報通信など受注拡大

 エレクトロニクス商社は、半導体の受注は車載、情報通信、産業機器、医療などさまざまな分野向けに順調に拡大しているが、世界的な半導体不足で納期が大きな課題を抱える。一方で半導体単体ビジネスからシステム化によるソリューション事業の重要性が高まり、各社は同事業の強化に取り組んでいる。

 マクニカは最先端の半導体や電子デバイス、ネットワーク、サイバーセキュリティー商品に技術的付加価値を加えて提供し、最近は人工知能(AI)、IoT関連の取り組みを強化している。原一将社長は「社会・顧客・サプライヤーの間に立ち、革新の価値を高めるアクセラレーターとして、より良い社会を実現することに努める」と述べる。

 丸文はシステム、デバイス両事業を核に産業機器、情報通信、自動車を重点分野に位置付ける。飯野亨社長は「デバイス調達と納期が課題だが第5世代移動通信規格5G関連の基地局設備、ローカル5G、パワー半導体の設備投資なども期待でき、現在の勢いを維持、加速したい」と2021年度に臨んでいる。

 菱電商事は新規のスマートアグリ事業が順調で、自社の植物工場(静岡県沼津市)を新設して22年3月に稼働する。正垣信雄社長は「植物工場で展開する環境制御技術を、大規模工場や大型ビル施設などにも応用展開して新たなビジネスを創出したい」と次の展開を見据える。伯東は半導体・電子部品、電子機器(システム)、工業薬品の3事業を主力とする。阿部良二社長は「車載、産業機器分野を中心に医療・ヘルスケアなどの分野にも注力しながら取り組む」と話し、デバイスソリューション事業強化のため、新組織「ビジネスイノベーション推進事業部」を4月に設けた。

 立花エレテックは9月に創立100周年を迎える。髙見貞行取締役専務執行役員半導体デバイス事業担当は「受注の高原状態が続き、需給はひっ迫している。今年いっぱいは今の状態が続くとみている。どんな状態になっても顧客の要望にしっかり応える」と言う。

技術商社機能持つ

 東京エレクトロンデバイス(TED)は「技術商社機能を持つメーカー」へと事業構造の転換を進めている。徳重敦之社長は「半導体の受注が倍増ペースで伸びているが、納期が課題。CN事業は着実に成長しており、安定した収益確保の源泉になっている。自社ブランドは計画通りに進んでいる」と21年3月期に続いて22年3月期も増収増益を目指している。

 カナデンはFAシステム、ビル設備、インフラ、情通・デバイスの4事業を柱に、国内のほか海外も日系企業を中心に中国・東南アジアで事業を展開している。本橋伸幸社長は「技術にこだわる商社として、これまでの高付加価値ソリューションをさらに進化させ、収益性の向上を第一に取り組む」と話す。

 菱洋エレクトロは今年2月に創立60周年を迎えた。「半導体・デバイス」と「ICT・ソリューション」を主要事業領域に据える。中村守孝社長は「既存事業だけでは今後の成長は望めず、新たな事業の柱の創出による中長期の成長戦略を打ち出す。そのためにはM&Aも視野に入れる」と方向を示す。

 たけびしは22年度に中期ビジョンの目標売上高1000億円を掲げて、4月に拠点を開設したベトナムはじめ海外事業強化に取り組んでいる。グローセルは中計最終年度の21年度、自社ブランド製品の高感度半導体ひずみセンサーSTREAL(ストリアル)を軸としたIoTソリューション事業の拡大などにより増収増益を目指す。石井仁社長は「STREAL事業の拡大、海外ビジネスの拡大などを重点に取り組んでいる」と述べる。ダイトロンは21年度が10年ビジョンの第1フェーズの中期3カ年経営計画の初年度。経営体制の若返りとさらなる経営基盤の強化を図るために3月に土屋伸介・新社長が就任した。

EMS事業拡大

 飯田通商はタイを中心にEMS事業を拡大している。タイ工場は、基板実装とクリーンルーム(ISO14644クラス7)で液晶パネル関連の貼り合わせ事業を主力に日本品質水準でのモノづくりを目指している。東莞工場の基板実装事業をタイ工場に集約し、タイをグロ-バルハブに位置付けた事業拡大を推進する。岡本無線電機は自動車、医療、エネルギーの3分野を重点的に取り組み、IoTなどの成長市場やロボット分野を強化している。明光電子はエレクトロニクスの統合商社として、30万点を超える電子デバイスの取り扱いに加え、さまざまな技術サポート、開発受託、購買代行、受託製造なども手掛けている。IoT関連の最先端技術・製品によるソリューションを拡大している。

機動力を強みに

 シナダインは大手商社にはない小回りの利く機動力を強みに事業の拡大に取り組んでいる。吉田一社長は「成長性のある通信、ヘルスケア、産業機器、環境技術、航空宇宙などの市場開拓を進めている」と話す。ミカサ商事は22年末の株式公開に向け、7月から組織体制を強化し、新中期3カ年経営計画(21~23年度)を推進する。コアスタッフはウェブ販売と従来型の営業を組み合わせたハイブリッド営業を強みに事業拡大を続けている。リバウンドエレクトロニクスは英国に本社を構える電子部品・半導体の独立系代理店。欧州で培ったノウハウとグローバルネットワークを生かし、日本の顧客に最適なサービスの提供を目指す。

 エム・アールエフ(M・RF)は米国の高周波デバイス専門メーカー、ミニサーキット社(ニューヨーク州)製の準ミリ波5G向けバンドパスフィルター、バラン、カプラーなどの販売に注力している。