2021.11.12 法的責任は問えず 行政依存を指摘東芝の株主圧力問題でガバナンス委が報告
オンライン説明会に臨むガバナンス強化委員会の金築委員長
東芝が昨年7月の定時株主総会で不公正な運営が指摘された問題をめぐり、同社のガバナンス強化委員会は12日、調査報告書を公表した。同社経営陣が経済産業省と連携して一部株主に不当な圧力をかけたと指摘した6月公表の報告書を受けた再調査で、車谷暢昭元社長や退任した執行役2人について「善管注意義務違反はなく、法的責任を問うことはできない」と結論付けた。一方、行政に過度に依存する体質を問題視し、体質改善を求める提言などを行った。
報告書によると、豊原正恭元副社長と加茂正治元上席常務が経済産業省と緊密に情報交換や相談を行っていた一連の行為は違法性はなかったと認定しながらも、「市場が求める企業論理に反する行為と評価せざるを得ない」と問題視した。
さらに、コーポレートガバナンス(企業統治)の観点から、行政に過度に依存する姿勢を生んだ原因にも言及。経産省の働き掛けに期待して株主対応を進めるという方向性に関して、ほとんどの取締役に情報が伝わらないなど、ガバナンスが十分効果的に機能しなかったことが「一連の行為を生んだ真因」とも指摘した。その上で、執行役の業務執行を適切に監督できるモニタリング態勢の再構築が急務と提言した。
ガバナンス委の金築誠志委員長は同日開いたオンライン上の説明会で、 2015年に発覚した東芝の不正会計問題以降に「企業統治に問題がある」と言われ続けてきた経緯を振り返った上で、「提言を受け止めることが東芝再生の出発点になると考えている」と述べた。