2021.11.16 【調理家電特集】ユーザーに寄り添った進化めだつ

内食化の流れの中、調理家電商品群は堅調な推移が見込める

 新しい生活様式が定着し、人々の暮らしは大きく変化している。食生活においても在宅時間が伸び、外食を控えたことで内食化が進んだ。このため調理家電全般は昨年度好調に推移し、今期はその反動があるものの、依然として内食化、おいしさ志向などは継続し、家事負担軽減のニーズも根強く、こうしたユーザーのさまざまな課題解決に向けて調理家電の果たす役割は大きく、今後も安定した需要が見込めそうだ。

 調理家電は、主力である炊飯器やオーブンレンジに加えて、ホットプレートやホームベーカリー、トースター、ジューサー・ミキサー、電気ケトル・電気ポットなどと幅広い商品がそろう。調理に関わる機器としては、冷蔵庫や食器洗い乾燥機もある。

 昨年度は巣ごもり消費を背景に、これら調理家電商品群は全般的に好調な推移を示した。家庭で料理をする機会が増えることで、より時短・家事省力化につながる特長を持った調理家電商品群への関心も高まっている。

 在宅時間の増加で家事負担は全般的に増えた。中でも調理に関わる家事負担は、朝・昼・晩3食とも内食となるため、コロナ前より増えており、調理に関わる負担軽減のニーズは強まる一方だ。

 このため、おいしく調理するほか、例えばオーブンレンジでは複数の食品の同時温めや、同時調理といった時短につながる機能開発が活発だ。

 炊飯器では、少量時短炊飯機能とか、冷凍ご飯用のまとめ炊きコース搭載といった機能開発が進む。

 また、材料・調味料を入れれば、あとはボタンを押すだけでおいしく調理できる〝ほったらかし家電〟の代表格ともいえる自動調理鍋といった新しい製品の需要も拡大している。

 さらに先進の人工知能(AI)やIoT技術を駆使して、食材の注文、献立提案、レシピの配信・追加といった、今までにない便利な価値を創出する動きも活発となっていて、調理家電は全体としてユーザーに寄り添った商品進化が目立つようになっている。

 食にまつわる調理家電の一つとして、家事負担の軽減に最も効果を発揮する食器洗い乾燥機への関心も高まっており、需要が伸びている。食洗機の場合、手洗いでは難しい高温洗浄による除菌・清潔、さらに手洗いと比べ大幅な節水を実現する環境性能の高さにも関心が集まる。

主要商品の動向

 調理家電の主力商品の一つ炊飯器は、昨年度、インバウンド需要が減少するなど厳しい市場環境にある中で、約557万台と大きな出荷台数があった(日本電機工業会=JEMAまとめ)。

 2021年度に入ってからは、月によって前年を大きく上回るときもあったものの、4~9月(上期)は、台数ベースで前年同期比89.7%、金額ベースでも同93.7%にとどまっている。

 こうした中でも、よりおいしさを追求する高価格帯のフラッグシップモデルは、比較的健闘している。家庭で食事をする機会が増えたことで、よりご飯のおいしさに対するニーズは強まっており、今後各社では高級ゾーンの商品戦略はさらに強める考えだ。

 IHジャー炊飯器は、米をしっかり炊き上げる火力が高くなっている。中でも高級ゾーンでの炊飯技術はより高度化しており、昔ながらのかまど炊きを目指す炊飯プログラムの開発、高火力で炊ける内釜やIH熱源の進化など、各社独自の技術で、米の甘み、うまみを引き出す炊飯方式の開発が活発だ。

 合わせて、IoT機能搭載の炊飯器のラインアップも増えている。銘柄米に合わせた炊飯プログラムの提供や米の自動注文、さらには見守りへの応用など、提供するサービス、ソリューションは今後より充実していきそうだ。

 さらに炊飯にとどまらず調理機能も充実させるなど、炊飯器本体の機能も進化しており、幅広いニーズに対応できる商品戦略が加速している。

 電子レンジは、巣ごもり需要が拡大する中、20年度は好調に推移した。出荷台数は前年比108%の358万3000台となり、3年ぶりに増加した(JEMA調べ)。

 21年度上期も台数ベースでは前年同期比5.1%増と健闘している。内食が進み、家庭でおいしく調理したいというニーズも高く、高級オーブンレンジが好調に推移している。

 また、在宅時間の増加で家事負担が増える中、時短、簡単調理を実現する加熱機能、レシピ開発も進み、さらにIoT機能の搭載と合わせ、よりユーザーの使い勝手が進化している。

 近年、注目を集める自動調理鍋は、共働き世帯の増加や巣ごもり需要を背景に20年には前年比2.9倍となる約90万台へと拡大したという(象印マホービン推定)。今後も安定して拡大が見込めそうだ。