2021.11.19 【はんだ総合特集】技術進化で多様化に対応カーボンニュートラルで低温はんだが見直し

カーボンニュートラルに貢献する低温はんだ

はんだ各社は高品質基板の要求に対応した製品開発を進めているはんだ各社は高品質基板の要求に対応した製品開発を進めている

 はんだが進化を続けている。はんだ各社はモバイル端末、車載、産業機器など最終製品別や、はんだ付けロボット、ディップ、ディスペンスなど、はんだ付け工法の多様化に対応した製品開発を加速。カーボンニュートラルへの関心が高まる中、低温(低融点)はんだが見直され、各社は新たな視点で製品化を進める。

 はんだ付けの結合プロセスは、フラックスによる「酸化被膜除去」の後、母材とはんだにおける「ぬれ」「溶解」「拡散」によって達成される。

 酸化被膜が除去された金属表面に溶融したはんだがぬれ広がり(ぬれ)、はんだ成分中へ母材の金属成分が溶け込む(溶解)。金属成分が溶解する過程ではんだ材と母材の原子が相互に移動することによって金属間化合物が形成される(拡散)。この溶解と拡散によってはんだの金属間結合が進む。

 とりわけ「ぬれ性」は製品の機能性や安全性に大きく影響するため、はんだ付けに欠かすことのできない特性といえる。EV用プリント基板をはじめ、従来以上に高品質はんだ付けが要求され、中でも「ボイド」ははんだ不良の原因となることから、ボイドを抑えるはんだ製品の開発が重要になっている。

原材料価格の高騰

 非鉄金属の値上がりや原材料価格の高騰が製造業の経営を悩ませている。エレクトロニクス業界においても同様であり、製品の製造に欠かせないはんだ業界では主材料のスズ、銀、銅の高騰によるシワ寄せが顕著になり、各社は対応に苦慮している。

 はんだ合金は過去にはSn(スズ)-Pb(鉛)系が主流だった。しかし、鉛が環境に与える影響から、日本では2000年にJEITA(電子情報技術産業協会)が鉛を無くしたSn-Ag(銀)-Cu(銅)系の「SAC305」(業界の呼称)を業界標準として推奨し、家電、AV業界などで広く採用されてきた。

 ただ、00年当時の銀1グラムの価格は20円台だったが、その後ジワジワと値上がりし、今年に入って90~100円で推移している。

 スズの値上がりも急激で、今年1月には2万1920ドル/トンだったが、9月の平均価格は3万4887ドル/トンに急上昇。その後3万6000ドルの大台を突破した。銅の価格は3月以降、高値が続き、今後1万5000ドル/トンに達するとの予想もある。

 はんだ各社は銀レス化製品の開発や、スズに比べると安価なBi(ビスマス)、In(インジウム)などの含有量を増やすなどコスト低減の努力を続けるが、高騰する材料価格をカバーするには至らない。はんだ材料に限らず非鉄金属は生産国の国策もあり、長期的にも価格高騰が懸念され、政府レベルの対応が必要とされる。

低温はんだ

 カーボンニュートラルに対する関心がSMT業界でも確実に高まる中、低温はんだが注目されている。はんだの融点が低いことは、はんだ槽の省電力化だけにとどまらず、実装工程の簡略化などソルダリングのさまざまなプロセスに好影響を及ぼし、その結果がカーボンニュートラルにつながる。

 一般的にはんだはBi、In、Cd(カドミウム)などが含有されることで融点が183度未満に下がる(SAC305は200度)。Sn-Bi系低温はんだは、フローソルダリングで使用するとドロス(はんだ槽の表面に浮いているはんだの酸化物で、プリント基板のはんだ不良の原因になる)が多く発生。また、スズ-ビスマス合金には延性が低いという課題がある。

 課題解決に向けて各社は、はんだ材料やプロセスの改良に取り組んでいる。

はんだ付けロボット

 はんだ付けロボットは生産の自動化・省人化ニーズを背景に、需要が広がっている。

 チップ形状以外の部品、例えば形状の大きなコンデンサー、コネクターなどは表面実装後に手作業でプリント基板に搭載したり、部分的なはんだ付けは熟練した作業者が手作業で行っていた。人件費の高騰、熟練者不足、ヒューマンエラーなどの課題を解決するため、はんだ付けロボットが不可欠になっている。これまでのスタンドアロン的な使い方から、SMT工程に組み込む工法の開発で、さらに普及が進むとみられる。