2022.01.28 【水晶デバイス特集】日本電波工業NX1210AC 実装面積を大幅縮小 サーミスター内蔵水晶振動子

7×5ミリメートルサイズOCXO

 日本電波工業は、ADAS/自動運転技術の高度化が進む自動車市場や、スマートフォンを中心とする移動体通信市場、小型基地局市場などを重点分野に掲げ、市場ニーズにマッチした小型・高品質の水晶デバイスの提案に力を注いでいる。

 第5世代移動通信規格・5Gスマホ向けでは、NX1612SD(外形サイズ1.6×1.2×0.65ミリメートル)で76.8メガヘルツのサーミスター内蔵水晶振動子を20年から量産開始している。

 移動体通信の5G移行に伴い、チップセットに使用されるクロック源の高周波化が進むことで受信感度や通信効率低下を招く懸念があった。これに対し、同社は装置内部の基準発信源を36.4メガヘルツから76.8メガヘルツに高周波化し、逓倍回数の削減による位相ノイズ改善などの対策を行うことで同製品を開発した。同製品は米クアルコム社の5Gスマホ向けSoCの認定第一号を取得している。

 同社は、5Gでの高周波化、低雑音、水晶振動子のドライブレベル引き上げ、高安定な温度特性維持などの水晶振動子への厳しい要求に対応するため、高品質の原石を自社生産し、フォトリソ技術を生かして、平行平面ウエハー、微細加工技術から、超小型水晶デバイスを供給するという優位性を確保している。

 さらに2021年には、5Gスマホ向けに、より小型のNX1210ACサーミスタ内蔵水晶振動子(76.8メガヘルツ)を開発、サンプル出荷開始した。クアルコムの5Gスマホ向けチップセットSoC認定第1号習得製品と同等特性で、実装面積を大幅に縮小した(1.2×1.0×0.55ミリメートル)。

 基地局向けでは、小型基地局向けに世界最小クラス(7×5ミリメートル)で、かつ動作上限温度プラス95度対応OCXO(恒温槽付き水晶発振器)を開発した。

 5Gやローカル5Gで多用される小型基地局は屋外の鉄柱上部や建屋屋上、屋内の壁面など狭いスペースに設置され、設置環境も直射日光や風雨にさらされるなど厳しくなる。

 小型基地局の内部部品は高密度実装による内部温度上昇や高温・多湿の外部環境の影響を受けるため、高温時の安定動作や良好な温度スロープ特性、良好な位相雑音特性を有する小型の高安定水晶発振器が求められる。

 同社はこうしたニーズに対応し、OCXOを構成する発振器回路、温度制御回路などの全てを1チップに収めた専用ASICを開発し、小型化を実現。

 さらに水晶原石の育成から水晶振動子製造まで一貫生産の強みを生かし、新たに高Q原石による小型SC-cut振動子を開発することで、5Gシステムで要求される高安定・低雑音を実現した。温度スロープ特性も従来の高精度TCXOに比べ200分の1のプラスマイナス0.1×10-9/度を実現。気密パッケージ採用により信頼性を高めている。

 自動車市場向けは、ADAS/自動運転の高度化などにより水晶デバイスの員数増が見込まれる中で、今後も高品質を強みに積極的な事業拡大を目指す。

 V2X、テレマティクス関連では、マイナス40~プラス125度対応のTCXO、カメラ、レーダー/LiDAR向けにミリ波レーダー用高周波クロック発振器を用意。車載安全系用途のクロック用水晶発振器は、2520サイズでマイナス40~プラス125度対応、AEC-Q100/200準拠の製品を用意している。

 ウエアラブル機器向けでは、セラミックパッケージを用いた超低背タイプの小型水晶振動子「NX1008AB」を開発。外形サイズ1.0×0.8×0.25ミリメートルMaxと、セラミックパッケージを使用した水晶振動子では業界最薄を実現した。

 小型光通信モジュール向けでは、2.5×2.0×0.9ミリメートルサイズかつ低位相ジッタの差動出力水晶発振器「NP2520SA(LVPECL出力)」「NP2520SB(LVDS出力)」を開発した。