2022.03.15 コスモHD、アブダビ政府系投資会社の全株式売却資本提携解消、再エネ分野は連携

コスモHDとの覚書締結に臨むマスダール社の幹部

 石油元売りのコスモエネルギーホールディングス(コスモHD)は9日、主要産油国のアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国政府の戦略投資会社「ムバダラ社」グループが保有するコスモHDの全株式を売却すると発表した。ムバダラ社との資本関係、提携を解消する。一方、再生可能エネルギーなどの分野での連携は進めており、ムバダラ社との関係が「良好なまま継続することを確認している」(コスモHD)。

 ムバダラ社にはアブダビ政府が100%出資。ムバダラ社グループとは、コスモHDが2007年に実施した第三者割当増資を引き受ける形で、資本提携を始めた。現在、コスモHDの株式15.70%を保有する筆頭株主だ。

 だが、売却の相談はムバダラ社側からの申し出によるもので、コスモ側が「意向を尊重」(コスモHD)して承認したという。ムバダラ社が医療や生命科学分野を重視する投資戦略に進展させた一環で、今回の売却が決まったとみられる。ムダバラ社から受け入れていたコスモHDの社外取締役2人は今後、辞任する。

 コスモHDは、アブダビ首長国で約50年にわたって原油調達や石油開発事業を続けている。21年3月に新たな油田鉱区の権益を取得したほか、複数の鉱区で開発を推進。今回の売却で「石油開発事業や原油の安定調達など事業活動への影響はない」とする。

 一方で1月、ムダバラ社グループで再エネ事業を手掛けるマスダール社と、水素や燃料アンモニアなどの脱炭素分野で共同して事業検討する覚書を締結した。コスモHDの再エネ事業の柱である風力発電では、洋上風力も検討の中心に据えた。

 マスダール社はムダバラ社の完全子会社で06年創設。再エネや持続可能性を求めた都市開発、クリーン技術などの分野で商業化を進めている。中東のほかエジプトや英国、米国、豪州、インドなど約40カ国で事業を展開する。

 締結では協業する検討領域として、日本国内での洋上風力発電事業を含む再エネプロジェクトへの参画や、両社が関心のある地域でのプロジェクト参画、さらにCCUS(CO₂の回収、貯留、利用)、蓄電池、エネルギー取引などを盛り込んだ。

 コスモHDは「資本提携は解消するが、再エネ分野では関係を積極的に深めていく」としている。