2022.03.18 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<79>アフターコロナのDX&ローカル5Gを占う⑦

 本連載第73回「アフターコロナを占う①」(本シリーズの初回)において、2022年の干支は「壬寅(みずのえとら)」で、「厳しい冬を越えて、新しく立ち上がるために動きだす」という象意から、「今年はアフターコロナ時代が幕を開け、5Gが本格的に始まり、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)市場が動きだす年になりそうだ」と書いた。

 ところが、シリーズ連載の途中でウクライナ情勢が急変し、予想をはるかに上回る緊迫した状況を呈してきた。そのため、やっとの思いでコロナ禍から回復基調にある世界経済は、一転してリセッション(景気後退)する可能性も出てきた。

最悪のシナリオ

 たとえコロナ禍が収束しても、ウクライナ情勢の悪化がさらに続けば、貿易やエネルギー価格を通じた悪影響が本格的に顕在化し始めるため、「経済活動はコロナ禍以前の状態には戻れない」という「最悪のシナリオ」が現実味を帯びてきたということだろう。

DX(ビジネス変革)&5G ニューノーマル時代の到来

 帝国データバンクが2月28日に発表した「ウクライナ情勢による企業活動への影響(直接・間接)アンケート」によると、ウクライナ情勢により、企業活動に「マイナスの影響がある」と答えた企業は61%に上る。

 具体的な影響については「原油・天然ガスなどエネルギー価格の高騰」と、それに伴う「物流コストの増大などによる原材料価格や、電気代などの高騰」による影響が多く挙げられている。中には「半導体関連の材料の供給に問題が生じるのでは」という声も上がっているらしい。

 半導体生産に必要なレアメタルやレアガス(希ガス)など原材料の一部をロシアやウクライナに依存している国が少なくなく、世界の半導体生産のサプライチェーンを揺さぶっていることからも分かる。もちろんDXをはじめ、第5世代移動通信規格5Gやローカル5Gの基地局や端末製品の製造にも関わる話だ。

 三菱総合研究所が3月9日に発表した「ロシアのウクライナ侵攻による世界・日本経済への影響」によると、2022年の世界経済は、2月16日に公表した内外経済見通しの実質GDP成長率予測から0・5%ポイント下振れに改定している。

 その中で、欧州はロシアからの調達制約やロシア向け輸出制約の影響も大きく、成長率の下振れ幅も大きいが、日本は主要国のなかでは相対的に影響は小さいとしている。ただ、中国の動向など不確定要素も大きい。

 特にDXと5Gは、中国と本連載のシリーズでも取り上げた北欧やドイツが鍵を握っているといっても過言ではない。この先どうなるか--。ますます読みにくくなってきた。

強烈な変革

 2022年の暦注では、同じ「寅年」でも九星気学でいう「五黄土星の寅」で、その「破壊と再生」という象意から強烈な変革がくる場合があるという。DXと5Gが切り開くニューノーマル社会への道は、もう引き返すことができないことだけは確かなようだ。(本シリーズ終わり)(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉