2022.07.08 【電子部品技術総合特集】トーキン 及川英彦 研究開発本部長
及川 本部長
高耐熱・高周波・高効率化
新規材料領域開発 公的機関と連携
トーキンの研究開発体制は、マグネティック・センサ&アクチュエータ(MSA事業本部)関連の材料開発を研究開発本部(仙台)で行い、キャパシタ事業部のタンタルキャパシター、スーパーキャパシター(電気二重層)関係の研究開発はキャパシタ事業部(富山)で継続実施している。親会社の米KEMET社が台湾YAGEO社の傘下となったが、開発体制に変更はない。
仙台の研究開発本部では、MSA事業本部関連製品向けの材料・プロセスの新規案件を中心とした開発を実施。このほか、分析装置によるナノ分析、CAEを研究開発本部内の知的財産のグループが全社開発に対し横断的な活動を行う。
MSA事業本部への材料・プロセス開発について及川英彦研究開発本部長は、「『高耐熱化』『高周波化』『高効率化』をキーワードとして開発を進めている」と話す。
車載は電動化に照準を合わせた開発を強化。2021年には、仙台で開発した材料をベースに、車載対応メタルコンポジット・パワーインダクターで使用温度上限を180度に高めた「MPEVシリーズ」を商品化した。
通信用途で重要な役割を果たすサーバーは大電流化・大出力化・高速化が進んでいる。こうした市場要求に対し、同社は「低損失NANOMET(ナノメット)材料」の開発を継続的に行い、この開発材料をベースに高電力密度に対応可能な「NANOMET小型インダクター」の基礎開発が完了し、現在、エンジニアリングサンプルの提供を開始している。
ノイズ抑制シート「EFSシリーズ」(バスタレイド)は10ギガヘルツレベル対応品を量産済み。「現在、28ギガヘルツのミリ波帯域に向けた材料開発も進めている」(及川本部長)。フェライトや圧電材料などの酸化物系の開発も市場ニーズに合わせ積極的に進める。
AEC-Q200車載グレード、1000V対応、150度対応などの高耐熱フェライトコアを用いたチョークコイルのシリーズアップも計画。YAGEOグループ間での技術・開発に関するシナジーディスカッションも実施している。
同社が固有技術を有するフェライトやマグネットの領域は独自開発を行うが、新規材料領域では大学や公的研究機関と連携した開発を進めている。