2022.09.09 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<101> アジャイルによるDX推進者の早期戦力化③

 「101匹わんちゃん」は、ディズニーの子ども向けアニメーション映画だ。後に「101」という実写映画も公開された。この「101」という番号は、本や講座のタイトルにもよく使われている。

 アメリカ英語の「101(ワン・オー・ワン)」は「入門講座」を意味するものらしい。かつてアメリカの大学で講座番号が三桁表示されるようになり、開講コースの入門講座には「101」の講座番号が振られたのが由来なのだそうだ。例えば「Math101」は、数学コースの入門講座になる。

 さて、前回は記念すべき連載100回だったが、多忙のため買い置きしていたワインのコルクを開ける暇もなかった。連載回数は大台に乗ったとはいえ「やっと、5Gの門に入った」というのが正直な実感だ。そしてくしくも今回の連載回数と同じ「101」について考えてみたわけだが、連載タイトルを「5G101(5G入門講座)」にしてもおかしくないかもしれない。

 というのもデジタルトランスフォーメーション(DX)時代では、5Gという狭い技術だけを知っていてもビジネスの変革はできないからだ。ICT(情報通信技術)をベースに、ワイヤレスIoTやデータサイエンス、人工知能(AI)といったさまざまなデジタル技術を活用して課題を解決する能力を身に付けなければならないと考えている。

技術習得に計15年

 「えっ、そんな広範囲な技術を習得することなんかできるの?」「習得するだけでも、10年かかるかもしれないわ?」と、疑問を呈されるかもしれない。筆者も、インターネットのビジネス活用が本格化した2000年ごろから、業務の傍らネットワーク大手のシスコシステムズが行うシスコ技術者認定などでICTの基礎を習得するのに5年かかった。

 その後、5Gの基礎となる移動通信システムやWi-Fiなどのワイヤレス技術、IP電話などのアプリケーション技術を習得するのに5年かかった。

 そして、ディープラーニングの社会実装が始まった10年ごろから、大学で研究したニューラルネットを足掛かりにデータや機械学習といったAI、IoTを習得するのにさらに5年かかった。

 計15年も要したのは、研究開発ではない業務上、アフター5に学習せざるを得ず、周りに教えてくれる人もいなかったからだ。ゼロからの独学だったこともあり、開発サイドでは得られないユーザーサイドの活用ノウハウも身に付いた。

 確かに、DX推進者に必要なデジタル技術を活用するスキルだけを学ぶのであれば、計3年程度で済むかもしれない。それでも早期戦力化とは言えないだろう。

 ではどうするのがよいか。

チームで技術磨く

 それは、一人で全ての技術を持つ〝スーパーマン〟になることを諦め、全ての技術をチーム全体で身に付けるようにすることだ。実現するためには前回述べたラーニングアジリティーのうち、対人関係のリスクテイク、コラボレーション、情報収集、フィードバックが重要となる。

 例えば、5G技術が欠けているDX推進チームがあるとしよう。そこに5G技術を持つあなたが入ったとして、いかにして無線の言葉も通じないチームメンバーにローカル5Gの必要性を理解させていくのがよいだろうか? 次回、考えてみたい。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉