2022.09.26 【九州・山口産業特集】九工大がセミナーや設備面を充実、半導体関連の人材育成や産学連携の取り組み加速、工程全体を俯瞰できる技術者育てる
九工大のマイクロ化総合技術センターでの研修のもよう(提供=九工大)
九州の産業界で半導体への期待が高まる中、大学など研究機関でも動きが活発だ。福岡県内に3キャンパスを持つ九州工業大学も、人材育成や産学連携に向けた取り組みを加速させている。
「上流から下流まで、半導体産業を支える人材を送り出せる態勢が整っている」。九工大の三谷康範学長は、13日に行った記者向けの説明会でこう語った。
九工大では、パワー半導体の研究を担う「次世代パワーエレクトロニクス研究センター」と、アルゴリズム領域まで連携する「ニューロモルフィックAIハードウェア研究センター」を備え、材料からシステムまでを一貫させた研究を進めている。
企業の若手研究者や博士課程の学生を対象としたパワー半導体の基礎技術に関するチュートリアルや、ウエハー技術から応用までを学ぶセミナーを実施。そのほか、全キャンパスが連携して半導体に関するトピックを取り扱う講義も、2013年から行ってきた。
設備面も充実させている。飯塚キャンパス(福岡県飯塚市)の情報工学部内に設置された「マイクロ化総合技術センター」は、半導体素子と微細加工デバイスの両方を開発できる施設だ。設計から製造・評価までを一貫して開発できる設備をそろえている。
学内外の技術者が研究開発に活用しているほか、半導体製造を体験できる施設として役立てられている。
同センターの中村和之センター長は「半導体製造の工程全体を俯瞰(ふかん)できる技術者を育てられることが特長だ」と強調する。
最新の半導体製造工場は自動化が進んでいてブラックボックス化しているケースも少なくない。日本は製造装置の開発を強みとする一方、工程を理解している技術者が減ってきているといった実態がある。
同センターでは、社会人を対象に、4日間でMOSFETと論理回路を作製しながら半導体の微細加工技術の基礎を学べる公開講座を開催している。
8月には、高等専門学校の教員を対象としたカリキュラムも実施。北海道から沖縄まで、17人の教員が参加するなど教育人材の育成にも貢献している。
コロナ禍となってからは遠隔セミナーも実施していて、半導体製造の様子を全国からリアルタイムで視聴できるように。受講者数は22年度だけで700人となる見込みだ。
次世代技術開発も
4月からは半導体製造装置を手掛ける上野精機(福岡県水巻町)と、「次世代先端技術共同研究講座」を開設。3年かけて研究を進める予定で、九工大の持つ次世代AI技術と同社の技術を掛け合わせ、省エネや省人化などを実現する装置の開発につなげていく狙いがある。
同社の上野昇社長は「当社が理念として掲げる『価値創造』を実現するためにも、研究開発型企業として進化していかなければならないと考えた」と、九工大との連携に至った経緯を説明した。
三谷学長は「半導体産業が活況を呈している中、私たちが貢献できる部分はたくさんある」と力を込めた。