2023.01.10 【製造技術総合特集】進む製造業のスマート化 サプライチェーンを強靱化し技術開発のスピードを加速

製造業の省人化・自動化ニーズの高まりがFA・製造装置の需要拡大の基盤になっている

世界で確実に増え続ける基板実装需要世界で確実に増え続ける基板実装需要

 2022年は歴史的な激動の一年だったが、製造業の設備投資は活発でFA・製造装置業界も高水準の需要で推移した。23年は、設備需要をけん引してきた半導体製造装置業界の投資が抑制傾向にあるなど、調整局面が想定されている。しかしEV(電気自動車)、IoT、DX(デジタルトランスフォーメーション)、カーボンニュートラルなど時代の潮流は確実に進展しており、中長期的には大きな流れが変わることはないとみられている。

 23年の業界動向についてFUJIの曽我信之会長兼社長は「23年はスマホをはじめとする通信関係の需要は伸び悩むが、車載や産業機器向け需要は安定推移すると見ている。世界的にDXが進展する中で、基板実装の需要は中期的に世界で確実に増え続ける。ただ、23年については世界経済を下押しする多くの要因が複合的に絡み合い、大変厳しい状況となる」と見る。

 三菱電機の古谷友明執行役員FAシステム事業本部機器事業部長は「23年は米国の対中国のEAR強化、半導体製造装置の動向など懸念材料はあるが、製造業の自動化、省人化は中長期的に不可欠であり、FA事業の成長の基盤になる」と中長期を見据える。

 安川電機の上山顕治上席執行役員モーションコントロール事業部長は「23年前半は現在の不透明な状況が継続する。後半以降の回復に期待している」と23年に臨む。

 またFA商社・カナデンの本橋伸幸社長は「23年は一部取引先の調整局面が懸念され、慎重に取り組む」と話す。品川商工の中村利恵社長は「23年の市場環境は22年以上に厳しくなると見ている。SDGsやカーボンニュートラルの潮流が加速している中で、当社も創業以来63年の社業を通じてカーボンニュートラルの実現に貢献したい」と言う。

 23年は21、22年と続いた高水準の設備需要にブレーキがかかり、市場環境は厳しくなるが中長期の潮流は変わらないというのが大方の予測。ただ多くのFA・製造装置企業が22年の受注残を抱えており、部材調達とも相まって生産活動は引き続き活発になるとみられる。23年は、逼迫(ひっぱく)していた生産能力を整備し、部品を含むサプライチェーンの立て直しや強靭(きょうじん)化を図り、技術開発のスピードを上げていくための重要な年と言えそうだ。

 ■半導体製造装置市場

 WSTS(世界半導体市場統計)は昨年11月、最新の半導体市場予測を発表した。22年の世界半導体市場規模は前年比4.4%増と成長は鈍化、23年は同4.1%減と4年ぶりのマイナス成長を予想する。

 一方、23年度の半導体製造装置市場は、一部装置で納期延期などの動きから前年割れの可能性が高くなった。DRAMを中心としたメモリーの設備投資は既に削減が発表され、昨年10月に発表された米国の新輸出規制が半導体製造装置市場に与える影響も懸念されている。

 日本半導体製造装置協会の牛田一雄会長は「多少の増減はあってもデータセンター投資やハイエンド品のスマートフォン需要は堅調で、車載用途では自動車1台当たりに搭載される半導体数量もさらに増加することは間違いない。23年度が一時的に落ち込んだとしても調整は短期間にとどまり、24年度は再び高い成長率に戻ると考えている」と分析する。

 ■生産自動化・省力化ニーズ

 総務省の統計によると、日本の総人口は22年4月1日現在で1億2507万人。1年間に約78万人減少した。人口減少は製造業の就業者減をもたらす。発展途上国においても若い人たちの製造業離れが顕著になりつつあり、将来的にも大きな課題になってくる。

 製造業での省人化、自動化は不可欠であり、FA・製造装置業界の需要を中長期に支えることになる。ロボット導入をはじめ、工場のスマート化による自動化・省人化のニーズがますます高まると予想される。

 国際ロボット連盟(IFR)のロボット統計でも世界的に産業用ロボットの需要が拡大している。同時に、これまで高シェアを維持してきた日欧に中国勢が迫り、勢力図に変化が表れ始めた。23年は変化が加速すると見る向きも多い。

 工場のスマート化は徐々に需要が広がっている。実装機各社は実装機などの進化によって、省力化から「無人化」へと一歩進めた提案を始めている。