2023.01.12 【計測器総合特集】計測器 23年の戦略 各社トップに聞く 東陽テクニカ 高野俊也社長
高野 社長
スペースICT/バイオサイエンスなど新領域で先を見据える
東陽テクニカの前年度売上高は、公表値を超えて264億円で着地。2022年は急激に円安が進行したが、営業利益は前年度比で35%増を達成した。売上総利益率は、40%超の高水準を維持。高野俊也社長は「製品力の強さで、利益を意識しながら営業が受注を獲得してくれた」と振り返る。
特に数字に寄与したのは物性/エネルギー事業。EV(電気自動車)開発向け投資が増加し、セグメント売上高は前年度比23%増の60億円に達した。主力は電池で、カーボンニュートラル分野の活況を背景にEV用のリチウムイオン電池や全固体電池の試験装置が伸長。EVの性能評価時に電池を模擬する「電源シミュレーター」が伸びたのも大きい。
高野社長は就任以来、自社を「計測ソリューションプロバイダー」と位置付ける。計測器の箱売りからシステムと組み合わせた高付加価値の「トータルソリューション」の提案へのシフトに努めてきたことが実を結びつつあり、自信を深めている。
無線環境下で通信試験を行う車載向けOTA試験への注力はその一つ。コネクテッドカーの無線通信性能を計測するシステムは中国国家機関などで3件受注。合弁会社を設立した米国でも、5Gアプリケーション向け試験装置に実績が出てきた。自動運転向けシミュレーターも期待をかけるソリューションだ。
そのほか、セグメント別で、情報通信/情報セキュリティーは前期に5G基地局シミュレーターがキャリアから大きな案件を受注。今期はその反動から前年比で微増だが、引き続き堅調だ。
機械制御/振動騒音も、コロナ感染拡大で停滞した自動車関連投資が復調した。ネクスコ東日本エンジニアリングと共同開発したのは、LiDARを用いて2車線の路面性状を同時計測するシステム。路面管理の効率化が図れる新しい商材だ。
光で衛星と通信を行って地球全体に通信網を築く「スペースICT」や、バイオサイエンスなどの新領域でも将来も見据える。
23年9月期は売上300億円を掲げた中期経営計画の2年目。受注高は同規模に膨らんでおり、目標達成を視野に入れる。