2023.06.01 生成AI、半導体は支え手から前面へ エヌビディア好調、DC需要も

コンピュテックスで講演するフアンCEOは母語の台湾語もまじえアピール

 対話型・生成AIを巡る動きが、米半導体などテック大手にさらに広がり始めた。エヌビディアの時価総額が一時1兆ドル(約140兆円)に達し、テック大手同様に「1兆ドル」グループに入るなど、業界内外の勢力分布も変わりそう。これと連動してデータセンター投資も大きく膨らむとみられる。

 「生成AI時代のイノベーションを推進するため、マイクロソフトと協力している」。エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、台湾で開催のCOMPUTEXで基調講演。約2時間の多くを生成AIに割いた。

 大容量メモリーのスパコン強化やデジタル広告エンジン構築、世界中のエレクロトロニクスメーカーによる同社のAI採用などを訴求。広告から製造、通信までさまざまな業界の変革を促すプラットフォームとして、さまざまなシーンでの活用を広く訴えた。

 例えば「46兆ドル規模の製造業で、生成AIやオムニバース(メタバース)技術でデジタルツイン構築ができる」など、産業面の展開を披露。開発者がさまざまなカスタムAIモデルを構築・展開するために使用できるファンドリー・サービスも発表した。

 さらに「7000億ドル規模のデジタル広告業界にも新たな機会を生み出す」と指摘。「ユーザーが情報にアクセスすると、広告が生成されるようになる」とコンピューティングモデルの変化を宣言した。

 元々ゲーミングなどGPUに強みのある同社は蓄積を生かし、生成AIの機械学習に適した半導体を開発。この分野に必要な半導体の多くを占めるとされる。

 同社はマイクロソフトから、ChatGPT展開に必要な万単位のオーダーを受けるなどしているとされる。さらにグーグルなどテック大手も生成AIの競争を進める中、エヌビディアは決算発表で「奪い合いの様相になっている」と展望した。

 半導体に詳しいオムディアの南川明氏は「近年は年間100カ所前後のペースで、データセンターが構築されている。その全部ではないにしても生成AIが使われるようになれば、必要なGPUは膨大になる」と指摘する。

 一般的なグーグル検索などに比べると、生成AIではプロセッシングパワーが数倍以上必要になるとされる。

 南川氏は「エヌビディアからTSMCへの発注も、現状規模ならともかく、今後さらに増えるだろう。各社の投資も進む」と右肩上がりを見込む。

(2日付電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)