2023.06.30 【育成のとびら】〈5〉成長の不安を取り除く策とは?

企業はキャリアの道筋を示し支援を

上司から若手へ「期待」を明確に

 今年の梅雨は豪雨になったと思ったら真夏日が到来するなど、全国的に不安定な天候が続いている。この時期は体調管理などに苦労する人も多いのではないだろうか。

 労働安全衛生法第71条の3「快適職場指針」によると、快適な職場とは「仕事の疲労やストレスを感じることの少ない職場」であり、企業には温度や湿度などの環境整備とともに「仕事の不安」を取り除く継続的な取り組みが求められている。

 2022年7月に当社ラーニングエージェンシーが実施した全国900人の2~4年目社員の意識調査結果より、先が見えない現代社会では若手社員の多くが「将来のキャリア像」を描きにくくなっていることは前回述べた。

 そこで、今回から2回に分けて将来に悩む若手社員の「自身の成長についての不安」を取り上げたい。

 2~4年目は新人から一人前へと周囲の目が変わる過渡期でもある。その中で彼らは自身の成長度合いをどう捉え、何を不安に感じているのか。今回は全年次の共通傾向をひもといていく。

 まず、当社は対象者全員に「自分の成長」と「自分の知識・スキル」の2点について不安に感じることの有無を質問した。すると全年次の4割ほどの社員がいずれの質問にも「不安」と回答した(図1)。

 「自分の成長に不安」と回答した社員に対し「どんな場面で不安を感じるか」を聞くと、回答率第1位は全年次共通で「役割が変化しない」だった(図2)。

 一方、2位以下は年次で違いもあったが「昇進・昇格できない」「期待を聞いたことがない」といった項目に票が集まった。

 これらの結果から、企業は次の2点に注意を払う必要があると言える。

成長への不安

 一つは全年次の約4割、2年目では約半数もの社員が抱く「成長への不安」を理解し、寄り添う姿勢を示すことだ。中でも「役割が変化しない」「昇進・昇格できない」という不安には特に注意が必要だ。

 「まだ2年目なのに?」と思う人もいるだろう。しかし、報道やSNSなどで「次世代リーダー」や「若手経営者」として若手世代の活躍を見聞きする機会も多い今、彼らが自身の現状と比較して不安になる気持ちも理解できる。

 こうした不安を払拭していくには、まず企業側が彼らにキャリアの道筋を教え、彼らの成りたい姿の実現を支援する姿勢を示すべきだろう。

 そしてもう一つが「期待」を伝達することだ。2~3年目を中心に「期待を聞いたことがない」という声が多く集まったことを企業は重く受け止める必要がある。

期待に応えたい

 前回述べた通り、上司との関係性の悩みは離職意向に大きく影響する。上司が自分に「どう育ってほしいのか」「どんな役割を担ってほしいのか」が分からないとき、彼らは強い不安を感じているのだ。

 「期待に応えたい」という若手の思いに応える--。そんな姿が今の上司には求められている。

 次回は「成長への不安」について各年次で異なる傾向を取り上げる。若手の育成と離職予防を講じる際のヒントを示していく。(つづく)

 〈執筆構成=ラーニングエージェンシー〉

 【次回は7月第3週に掲載予定】