2023.07.10 河野デジタル相、「マイナ保険証」の必要性を国民にあらためて訴える 都内で講演

都内のホテルで講演する河野デジタル相=10日(共同通信社きさらぎ会のライブ配信より)

 トラブルが相次ぐマイナンバーカードに対する国民の信頼が揺らぐ中、河野太郎デジタル相は東京都内のホテルで10日に講演し、「デジタル技術を使うことで、国民の皆さまの毎日の生活を今まで以上により便利により快適により豊かにしていく」と強調。マイナンバーカードを基盤に利便性の高いデジタル社会を実現する計画について、あらためて理解を求めた。

 河野氏は共同通信社きさらぎ会の東京7月例会で、「デジタル改革を始めとした今後の日本の行方」をテーマに講演。この中で「マイナンバーカードを持っていて便利だったねという利便性を皆さんに感じてもらい、これを使おうかということにしなければいけない」と強調。現行の健康保険証を2024年秋をめどに廃止し、その機能をマイナンバーカードに組み込む「マイナ保険証」に触れ、導入の必要性を訴えた。

 河野氏は、現行保険証で十分という国民の声を踏まえ、「今の医療を変えることがなかなか難しくなる。利便性を上げることもなかなか難しくなる」と指摘。医療機関側と受診する国民側の双方にもたらす恩恵について力説した上で、「いろいろな医療の情報を個人名を消して匿名化して『こういう病状のときにこういう薬だとこういう結果になる』『こういう治療法だとこういうふうになる』というビッグデータを集めたい」と力を込めた。データに基づき治療法を選んだり生活習慣を改善したりする環境を整え、一人一人の医療の質向上につなげることに意欲を示した格好だ。

 また、マイナンバーを誤ってひも付けるトラブルが相次ぐ問題を受けた総点検の中間報告を、8月上旬をめどに取りまとめる政府の方針にも言及した。

 総点検本部のトップを務める河野氏は、全ての個別データの総点検が必要なケースを整理する作業に触れながら、「確実にやってもらうことが大事。個別データがたくさんあるところは、それなりに時間をかけてやってもらう」と説明。着実な点検の実施を優先する考えを示した。

 マイナンバーカードに関しては、マイナ保険証に他人の情報が登録される事案なども発覚。政府の個人情報保護委員会はマイナンバーカードを巡る相次ぐトラブルを受けてデジタル庁への立ち入り検査を検討しているとみられ、国民から信頼を勝ち取りデジタルの利便性を津々浦々に実感させる取り組みは一筋縄ではいかない。マイナンバー制度の前途には、険しい道のりが待ち構えている。