2023.08.31 【ソリューションプロバイダー特集】東芝デジタルソリューションズ 岡田俊輔社長(東芝執行役上席常務CDO)

量子の時代も見据える

デジタル革新を強力に後押し

 デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する市場が拡大する中、昨年度に続き2023年度も順調に推移するだろう。主力の官公庁や製造業に加えて、流通業や金融業の伸びも目立ってきており、市場全体が膨らむ傾向にある。ただ、為替の動向や米国景気の先行きを注視する必要があり、慎重に経営環境を見たい。

 製造業のDX推進に向けて、スマートマニュファクチャリングの事業領域を大きく伸ばそうと、4月に事業を再編。東芝デジタルソリューションズと東芝インフラシステムズの双方に専門組織「スマートマニュファクチャリング事業部」を設立し、両社の連携によるビジネスを強化することにした。東芝デジタルソリューションズは製造業向けのデジタルソリューションを提供する事業、東芝インフラシステムズが産業用制御機器を製造する事業をそれぞれの新組織に集約。工場やプラントなどで利用するOT(制御・運用技術)とITを組み合わせたソリューションをワンストップで提供できる体制が整った。

 東芝グループは2022年6月に新しい経営方針を打ち出し、データやデジタルの力でカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)やサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に貢献すると宣言した。

 東芝は、フィジカル(実世界)から集まったデータを世の中に役に立つ価値へ変換するCPS(サイバー・フィジカル・システム)テクノロジー企業として磨いてきた。こうした強みを生かし、社会インフラや工場といった物理的に動いている分野の効率化とそこで得られたデータを生かす展開を、今後も後押ししていきたい。

 東芝では「広義のDX」を、デジタル技術で既存業務を効率化するデジタルエボリューション(DE)と、DEから生まれるデータの力を生かすプラットフォーム化を進めるDXに分けて成長戦略を描いている。

 既にDXを支援する事例を積み上げており、例えば、気象レーダーで受信した観測データをリアルタイムで高精度に解析できる「気象データサービス」の提供を開始。第1弾として、局地的な大雨を予測する「降雨予測サービス」を用意した。

 さらに量子技術で社会を変革するクォンタムトランスフォーメーション(QX)に向けては、量子インスパイアード最適化ソリューション「SQBM+」や量子暗号通信といったビジネスの手応えも得られており、進化のステップを着実に実行していきたい。