2023.10.06 【高専生のための半導体特集】日本の半導体産業 政府主導で自国生産強化へ

ラピダスの拠点の完成予想図

材料や製造装置などに強み

 半導体産業は、現代のテクノロジーとエレクトロニクス産業で中心的な役割を果たしているだけに、多くの異なる業種とサプライチェーンの関わりを持つ。

 半導体関連企業の業態は区分にもよるが、①設計から製造(前工程/後工程)、販売まで一貫して手掛ける垂直統合型デバイスメーカー(IDM)②設計開発に特化したファブレス③製造を受託するファウンドリー④パッケージングや検査専業のOSATに大別される。

 IDMは米インテルや韓国サムスン電子、米テキサス・インスツルメンツなど。ファブレスは米クアルコムや米エヌビディアなど。ファウンドリーやOSATは台湾や中国勢が強く、特に台湾TSMCは米アップルや主要ファブレス企業を顧客に抱え、受託生産で世界市場のシェアの半分前後を占める。

 コロナ禍で世界的にデジタル化が加速し、広い範囲で半導体の需要が急増したため不足が深刻化。最終製品の生産にも影響を及ぼす事態となった。その後、景気変調もあって一部弱含みにはなっているが、米国、欧州、日本では、政府主導で製造業を下支えするために半導体の自国生産強化に乗り出している。

 ロジック半導体などでは日本は押されているが、パワー半導体などには強みがある。さらに半導体メーカー以外にも、さまざまな関連業態があり、特に材料や製造装置では日本企業のシェアは高い(グラフ参照)。

 ▼半導体材料

 材料業界は、半導体製造に使用される各種材料を供給する。これにはシリコンウエハーやフォトレジスト、化学薬品、金属、窒化ガリウムなどある。この分野では、日本の信越化学工業などがある。ガスをはじめとした材料は、外交カードなどにもなる。

 ▼半導体製造装置

 半導体製造装置メーカーは、ウエハーの加工、薄膜形成、エッチング、リソグラフィーなどのプロセスで使用される製造装置を開発・販売。代表的な企業には、蘭ASMLや米アプライドマテリアルズなど。

 ▼半導体テスト・検査

 半導体デバイスへの高品質の要求を満たすためには、テスト・検査も重要になる。テスターや検査装置の製造・サービスを提供する企業群も多い。

 ▼半導体パッケージング

 半導体デバイスはパッケージングされ、実際のアプリケーションに組み込まれる。パッケージング企業は、チップの保護、冷却、電気的接続などを担う分野で重要。

 ▼設計関連

 設計も重要な分野。ソフトバンクグループ傘下で、最近、上場で話題になった英アームなどがある。また、デバイス設計には特別なソフトウエアが必要になり、設計プロセスをサポートする企業として米シノプシスなどがある。

 ▼流通・商社

 流通業界は、メーカーから顧客に製品を提供する役割を果たす。商社は、半導体材料や製品を橋渡しする。材料やコンポーネントの取引を円滑に進め、メーカーを後押ししている。

 ▼研究・開発

 高専を含め、公的な研究・開発・教育機関なども重要な役割を果たす。新しい材料やプロセス、デバイスの研究開発などが進み。産学連携も盛んだ。

半導体産業復活へ支援

 日本の半導体産業復活に向け、政府は「半導体・デジタル産業戦略」を21年6月に策定(その後も改訂作業を進行)。その柱のひとつで、6000億円余りの基金をもとにした、半導体投資への助成も発表している。米マイクロン・テクノロジーの子会社、マイクロンメモリ ジャパン(広島県東広島市)や、熊本県に進出するTSMC、キオクシアホールディングスと米ウエスタンデジタルの合弁(三重県四日市市)といった支援が決まっている。さらなる投資も見込まれている。

 最近の話題としては、先端半導体の新会社、ラピダスがある。日本の主要企業8社の支援も受け、政府肝入りで設立。米IBMなどから技術面の協力を受け、北海道千歳市に開発・生産拠点の設立を発表している。5兆円規模が必要とされ、ここでも政府の支援が予定されている。