2023.10.19 エプソングループ、環境ビジネス戦略を加速 不要金属を資源化 精錬工場の建設開始
アトミックスの新工場(完成イメージ)
セイコーエプソングループは環境ビジネス戦略を加速する。グループ会社のエプソンアトミックスは建物・生産設備に約55億円を投資し、不要となった金属を金属粉末の原料として資源化する金属精錬工場の建設を開始した。エプソングループは「環境ビジョン2025」で、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源消費ゼロ」を目標に掲げる。また、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」では、環境技術開発により、新たな環境ビジネスの創出に取り組んでいる。
アトミックスは、建設・生産設備に約55億円を投資し、不要となった金属を金属粉末の原料として資源化する金属精錬工場の建設を進める。新工場は、青森県八戸市と土地売買契約を締結した「八戸北インター工業団地16号区画」に建設するもので、15日に着工した。25年6月の稼働を目指している。
エプソングループは策定した環境ビジョン2025で、「持続可能でこころ豊かな社会を実現する」ことを明文化。ありたい姿の実現には「社会が抱える課題に向き合い、今までのやり方を抜本的に変える『変革』を起こさなければ、目標に到達できない」として、環境経営を強化している。
同ビジョンの達成目標として、①30年に1.5度シナリオに沿った総排出量削減②50年に「カーボンマイナス」「地下資源消費ゼロ」を掲げる。また、具体的なアクションとして①商品・サービスやサプライチェーンにおける環境負荷の低減②オープンで独創的なイノベーションによる環境型経済のけん引と産業構造の革新③国際的な環境保全活動への貢献、などに取り組んでいく。
Epson 25 Renewedでは、環境への取り組みとして、環境技術開発によって金属や紙などの原料リサイクルを進め、そこから生み出される技術やソリューションを使い、新たな環境ビジネスを創出することを目指している。
こうしたエプソングループの環境への取り組みの一環として、アトミックスは原料資源化の新工場を建設する。「今後の地下資源減少や金属原料の価格高騰などによるバージン原料の入手が困難となるリスクも考えられる」(同社)とし、金属の資源循環を実現する金属粉末製造を確立するため、新工場を建設する。
新工場は、不要となった金属を金属粉末製品の原料として再生する工場として、金属を溶解する高周波誘導炉や金属の不純物を取り除くAOD精錬炉、インゴット(塊)に固める鋳銑機などを導入。アトミックス内の製造工程で規格外となった金属粉末製品や工場内から排出される金属くず、エプソングループが排出する金属端材・使用済み金型など、不要となった金属をアトミックスの金属粉末製品の原料として再資源化する。
新工場の稼働で高炉製純鉄などのバージン原料を再生金属原料に置き換え、地下資源の保護とCO₂排出量の削減に貢献する。
アトミックスは、新精練プロセスの導入で次世代高機能粉末の開発を強化。磁気特性やアモルファス形成能力を向上させ、次世代の省電力・小型デバイスの実現に寄与していく。
また、環境ビジョン2050に基づく地下資源消費ゼロへの取り組みの一つとして、金属の資源循環可能な拠点を目指す。