2023.10.27 【育成のとびら】〈13〉「部門の目標・計画を達成したことがない」 管理職の6割がマネジメントよりプレーヤー寄り

 前回(第12回)は、多くの人事部門で特に注力したい育成階層として「管理職」「リーダー」を挙げているアンケート結果を紹介した。中でも管理職の知識・スキル、業務姿勢の課題について、「部下育成力」に回答が集中し、断トツだった。

 今回は、その部下育成などの管理職のマネジメント業務が組織の成果にどのように関わっているのかを管理職向けの意識調査から探っていきたい。

 当社ラーニングエージェンシーは2021年に管理職向け研修の受講者に対してアンケート調査を実施し、1715人から回答を得た。その調査で管理職自身の業務傾向と、部門の目標・計画達成について聞いたところ、マネジメント寄りとプレーヤー寄りで違う傾向が出た。

 結果をみると「毎年、部門目標や部門計画を達成している」管理職は、「マネジメント中心」「ややマネジメント寄り」と答えた割合が35.1%で、「プレーヤー中心」「ややプレーヤー寄り」は36・3%だった。

 逆に、部門目標や部門計画について「残念ながら達成したことがない」管理職は、「プレーヤー中心」「ややプレーヤー寄り」が60.8%で多く、「マネジメント中心」「ややマネジメント寄り」が22.4%で少なかった。

 この結果から、管理職がマネジメント寄りの方が、部門の目標や計画を達成しやすい傾向がうかがえる。

二つの視点で育成

 日本企業では従来、プレーヤーとして成果を出してきた人材に対する評価・期待・報酬として、管理職のポジションが用意されることが多かった。しかし、プレーヤーとして優秀であった人物でも、マネジメントや育成において適切な手法が分からないというケースは多いだろう。

 本来、管理職は、プレーヤーとしての業務からマネジメント業務、部下・チームメンバーの育成などに意識や行動をシフトする必要がある。今回は、そうしたシフトに役立つ、管理職に意識してほしい重要な二つの視点を紹介したい。

 一つは「長期的な視点」だ。人材の育成は、取り組んでも短期的にすぐに成果が出るものではないが、正しいやり方で正しく継続できれば必ず成果が出る。そのことを心得て、じっくり取り組む姿勢が重要だ。

 もう一つは「多様な視点による育成」で、管理職が独力で取り組む必要はない。育成対象者を最も把握しているのは誰か、誰による注意や励ましが対象者の心に刺さるのか、などの情報をチームで共有した上で、育成に取り組むのが効果的だ。

 そのために、まずは部門の中で人材開発会議を設定し、多角的に育成をする仕組みをつくることが大切になる。こうした取り組みを主導していくことこそが、管理職としての役割と言えるのではないだろうか。

 そうは言っても管理職の業務負荷が過大となりがちな傾向は、多くの企業において否めないだろう。管理職自身の努力には限界があるため、出席する会議の見直しなど、組織の仕組み化(業務効率化の仕組みや業務負担の見直し)によって管理職が自身の役割を存分に発揮できる環境を整えていくことで、組織全体の成長につなげていけるのではないだろうか。(つづく)

 〈執筆構成=ラーニングエージェンシー〉

 【次回は11月第2週に掲載予定】