2020.03.10 【スイッチ特集】各社、次世代ニーズに対応

車載用タクトスイッチ車載用タクトスイッチ

 スイッチメーカー各社は、次世代ニーズに対応するスイッチの新製品開発や製品バラエティ拡充に力を入れている。

 各社は自動車、FA/産業機器、高機能モバイル端末、社会インフラなどの成長分野をターゲットに、小型・高性能で信頼性や操作性に優れた製品開発を強化し、国内外での事業拡大を目指す。スイッチ応用製品の開発や、生産性のさらなる向上にも力が注がれる。

 スイッチは、ヒューマン・マシン・インターフェイスおよびマシン・マシン・インターフェイスをつかさどるデバイスとして重要視される。

 スイッチの用途は広く、スマートフォン/ウエアラブル端末などの携帯端末や白物/AV機器、PC/コンピュータ、事務機器、四輪車/二輪車、産業機器/製造装置、計測器、放送機器、電力機器、通信インフラや社会インフラなど、あらゆる工業製品で使用されている。

 スイッチのグローバル需要は、世界的な機器需要の増大などを背景に、13年から15年前半にかけて好調な成長を遂げた。

 15年後半から16年前半はやや踊り場的な状況が続いたが、16年11月ごろから需要が反転。17年は車載関連需要の拡大や、世界的な設備投資増大に伴うFA機器/工作機械/半導体製造装置の需要増大などがけん引し、年間を通じて堅調に推移した。

 一方、18年は米中貿易摩擦の激化や中国景気減速の影響などにより、特に秋以降、電子部品需要にブレーキがかかり、スイッチの需要も低調だった。

 19年も米中貿易協議や中国景気低迷長期化の影響を受け、スイッチ市場も一進一退の状況が続いた。JEITA(電子情報技術産業協会)のグローバル出荷統計によると、19年(1-12月)のスイッチのグローバル出荷額は前年比0.3%減の4370億円となり、微減ながら2年連続で前年比マイナスとなった。

 20年のスイッチ市場は、調整一段落から緩やかな回復が見込まれているが、一方で中国をはじめとする世界的な自動車市場の低迷長期化、さらに直近の新型コロナウイルスによる個人消費や企業活動への影響が懸念され、不透明感が強まる傾向にある。

 そうした中でもスイッチの世界需要は、車の高機能化や自動化ニーズの増加、高機能端末の普及拡大などを背景に、今後も中長期で安定した推移が予想されている。

 用途別では、自動車/車載電装関連を最大のけん引役に、FA/産業機器関連、日系スイッチメーカーがグローバルで高シェアを持つ携帯端末用などでの成長が期待されている。特に車載は、ADAS/自動運転技術の高度化や車の安全性・快適性向上、EVシフトに伴う新用途創出が期待されている。

 このほか、医療機器/ヘルスケア関連やロボット、ウエアラブル関連、次世代高速通信規格5G基地局関連、VR端末、セキュリティ関連での需要増、さらには次世代高速通信規格5Gの普及に伴うSociety5.0関連市場の広がりなどが、新たなスイッチ需要を創出していくことが期待されている。

 最近の電子機器・装置は、メカニカルスイッチからタッチパネルへの移行が進み、スイッチ需要には逆風の動きとなっているものの、自動車では新機能の搭載など高機能化の進展が、今後も操作系/検出系スイッチの新用途を創出していくことが期待されている。

 同時に、スイッチで培ってきた技術を活用して、タッチパネルモジュールへの参入を強化するスイッチメーカーも少なくない。

 スイッチ技術を応用した複合製品に力を注ぐ企業も見られ、操作系カスタムモジュール/ユニットの民生・車載・産機市場への展開による新規ビジネス創出が志向されている。

製品別動向

車載用スイッチ

 自動車には多くの操作/検出系スイッチが使用されている。コックピットのフロントパネル周りのほか、ハンドル周りやドアモジュール部にも多くのスイッチが搭載される。

 ボンネットやトランクの開閉検知などで検出系スイッチも多用されている。特に車載用検出スイッチは、車1台当たりの搭載数量が年々増加している。

 車載用スイッチへの技術要求は、小型軽量かつ高信頼性に加え、防水・防じん、耐振動/衝撃性、長寿命、操作感触の向上、静音化など多彩。

 車室内の操作系スイッチでは、日米欧の高級車メーカーは独自性のある操作感触や高級感のある操作音を求めている。

 各社は長年培ってきた操作フィーリングのノウハウや高度なシミュレーション技術を活用し、カスタムスイッチ開発に力を注いでいる。

 運転者の安全性を考慮し、前方から目を離さず操作できるスイッチやフィードバック機能付きデバイスの開発も進展している。

モバイル機器用スイッチ

 携帯端末用スイッチは、小型・薄型化と高強度・高信頼性・長寿命などの技術要件を同時に満足させることが必要。加えて、最近のスマホは防水性もトレンドだ。

 各社はこうした要求に応えるため、シミュレーション技術などを駆使した高度なR&Dを展開する。

 最近は、タッチパネル操作の台頭で端末1台でのスイッチ使用数は減少傾向だが、高級スマホでは小型スライドスイッチなどへの根強い需要がある。スマホ用スライドスイッチはここ数年、日系スイッチメーカーが世界シェアの大半を確保している。

産業機器用スイッチ

 産業用スイッチ各社は、産業機器・装置の高機能・高性能化や作業性・安全性向上などに向けた新製品開発に力を入れている。

 産業用スイッチの用途は、FA機器/製造装置やロボット、工作機械をはじめ通信・放送用設備、電力インフラ、建設機械、監視カメラ、鉄道関連、航空宇宙関連など多彩。産業機器/システムでは誤作動のない極めて正確な動作が求められるため、良好で確実な操作感触や長期信頼性、耐環境性能、優れた防水・防じん性などを備えたスイッチが追求される。鉄道業界向けなど、特定業種に照準を合わせた専用スイッチの開発も進展している。

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