2020.03.11 三菱電機 AI、IoT活用の家電開発 松本匡常務執行役が戦略を語る
松本常務執行役
三菱電機はAI(人工知能)やIoTを生かした家電開発を推進するとともに、これまで同様「マーケットイン」の視点で顧客ニーズをつかむことを目指している。
空調冷熱では海外展開による成長戦略を練るなど、来年度の創立100周年に向けて総合電機としての地力を発揮していく。松本匡常務執行役リビング・デジタルメディア事業本部長に聞いた。
国内では人口減少が進み、多くの製品で中長期的に大きな伸長は見込みにくい状況だ。一方で海外メーカーや新規メーカーの参入などで競争環境は厳しさを増している。
お客さまに認められる価値を提供していかなければコモディティ化の波にのまれていく。価値の実現には、製品単体ではなく、既存の枠組みを超えた新しい提案も必要になる。
当社は今年度から暮らしを表す「ライフ」、生活に必要なものを生み出す「インダストリー」、社会を支える「インフラ」、これらをつなぐ「モビリティ」の4領域において、これまでの100年で培ったグループ内外の力を結集して統合ソリューションの提案力を強化している。
特にリビング・デジタルメディア事業本部の領域では、例えばこれまでのようにオフィスにエアコンを設置するだけの提案ではなく、知的生産性を高めたいというニーズに対し、エアコンに加えて照明や換気など、当社グループ内外で持つ技術や製品を組み合わせた統合ソリューションを提案していく。そのための手段の一つにIoTやAIがある。
家電についても、従来は単体のハードとして完結しており、工場でより多く作り、より多くのお客さまに同じものを届けることを重視してきた。しかし、昨今ではスマートフォンのようにアプリなどを通じて個々のニーズに応じて仕様を最適化させることが求められるようになっている。
ネットワークを通じて機種単独だけでは実現できないようなサービス、ソリューションも求められており、一人一人に寄り添うことが家電にも必要だ。
当社は、ライフスタイルに合わせてAIで自己進化する家電や、ネットワークによる情報を生かした様々なサービスの提供など、「モノ」「コト」の両面からユーザー一人一人がやりたいことを実現できる暮らしのソリューションを推進していく。
AIやIoT、機種間連携など市場やニーズの変化に合わせて開発を進めていくが、方向性は大きく変わらない。プロダクトアウトではなく、マーケットインの視点でお客さまが何を求め、どのような解決ができるかを基本として推進していく。
海外事業については、空調冷熱システム事業を中心に、全世界で成長戦略を展開している。特に今年度は米国、欧州で業績を伸ばすことができている。不透明な部分はあるものの、今後も総合空調冷熱メーカーとして世界展開を積極的に進めていく。
今年は東京五輪・パラリンピックがある。その盛り上がりに期待する半面、不透明な要素もあるため、引き続き慎重に判断していく。
一方、業務用ではZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)などで受注実績が上がってきている。住宅用ではZEH(ネット・ゼロ・エネルギー住宅)対応のエネルギーマネジメントなど機器単体だけではない統合ソリューション提案でのビジネスチャンスは広がりつつある。
当社は来年度に創立100周年を迎える。次の100年に向けてビジネスチャンスを逃さず、さらに新しいビジネスも作り出せるように、製品・サービスをしっかり作り込み、総合電機メーカーとしての幅広い技術シナジーと事業シナジーを武器に、成長に向けて取り組んでいく。