2020.03.25 【関西エレクトロニクス産業特集】関西の景気、緩やかに拡大 新型コロナの影響懸念

万博会場のイメージ(出所:経済産業省)

 日銀大阪支店は、13日に発表した関西金融経済動向で「関西の景気は、基調としては緩やかな拡大を続けているものの、足もとでは新型コロナウイルス感染症の影響がみられている」と、景気判断を2月に引き続き2カ月連続で引き下げた。

 まさに想定外の新型コロナウイルスで、少し明るさが見え始めていた関西の景気も凍結されてしまった感がある。シンクタンクのアジア太平洋研究所(APIR)は、1月末を起点に回復まで9カ月かかった場合、関西の経済損失額を5345億円と試算した。

 関西のエレクトロニクス業界も新型コロナウイルス感染症による影響を、国内外の拠点での時差出勤、在宅勤務(テレワーク)、休暇制度の緩和などを駆使して最小限にする動きを続けている。休業措置の延長で実質1カ月半以上にわたり活動が停止していた中国の製造、販売拠点も2月10日から順次、操業・営業を再開した企業が多い。

 ただ、中国各拠点では従業員やワーカーが十分集まらず、通常稼働にはもう少し時間がかかるところが少なくない。各企業は円高の進行とともに新型コロナウイルス、それらによる景気下振れの業績への影響を懸念する。

 今年は、21年のワールドマスターズゲームズ、25年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)と世界から脚光を浴びるビッグイベントが続く関西の底力を見せる、まさに正念場の年といえる。エレクトロニクス業界では5G元年と言われ、インフラ整備が進みIoT、先進運転支援システムなどの新市場が立ち上がる。

 19年12月に搬入が始まり、21年に運用が開始される理化学研究所計算科学研究センターの次世代スーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」は、新しい世界を切り開く。関西のエレクトロニクス業界の実力を示し、本領発揮の年にしなければならない。

新製品の発売延期など不透明感

セットメーカー

 関西のセットメーカー各社は、米中貿易摩擦などで世界的に不透明な経済情勢が続いたことに、世界的な新型コロナウイルスのパンデミックが加わり、ますますビジネスの先行きに不透明感が漂っている。

 中国に端を発した新型コロナウイルスに関しては、国内でも非常事態宣言が考えられるほか、国内外への人の動きが制限され、今後のビジネスを見通すことが困難な状況だ。

 商品供給の面では、家電製品の多くが中国生産であり、調達する部品も中国からのものが多く、既に生産・供給に支障を来す商品も増えてきた。

 今後投入を予定する新製品においても、発売が延期になるといった影響が出ており、国内需要が盛り上がる夏商戦に向けて、どれだけ商品供給が可能となるか、現時点では見通せない。

 今後、各社の業績にどれほどの悪影響を及ぼすかも不透明だが、目下のところ世界的に早期の終息が困難な状況のため、当面厳しい経営のかじ取りを迫られそうだ。

難局をどう乗り切るか業界注目

電子デバイス・産業

 電子デバイス・産業分野の関西企業は新型コロナウイルスの感染防止策による中国工場の稼働停止や国内インバウンド需要の大幅減で先行き不透明感が増すが、通期業績予想を達成しようとぎりぎりまで追い込んでいる。

 20年3月期第3四半期(3Q)の決算発表時には足元のスマートフォン向けが想定より堅調に推移した。5G関連の需要も増加し、電子部品の在庫調整にもメドが立ち、半導体でも延期していた設備投資の計画が戻り、自動車向けの減速感はあるものの市況は底を打ち、先行きに明るい兆しが出てきたという声が聞かれた。

 しかし新型コロナウイルスの影響で世界的に生産活動や消費が鈍化。サプライチェーンにも影響が出始めるなど、この1カ月で市況は大きく変化した。

 3Q決算発表時に通期業績予想を据え置いた企業、下方修正した企業など、まだら模様だった業績は円高も加わって厳しい見通しになりつつある。村田製作所は対ドル1円変動で年間売上高90億円、営業利益45億円のインパクトになるという。新年度の20年度業績予想もこのままでは計画を見直すことになるかもしれない。

 予断を許さない状況だが、独自のコア技術を持ち、業界をリードする企業が多い関西だけに、この難局をどう乗り切るか業界、世界が注目している。

パソコン関連など引き続き好調

流通

 19年度前半は、消費税増税の駆け込み需要により量販店、地域店とも大きな盛り上がりを見せた。増税後の反動はあったものの14年の増税時ほどの落ち込みはなく、19年度後半もキャッシュレスポイント還元事業やウインドウズ7サポート終了に伴うPCの買い替え需要などで引き続き好調だった。

 20年も好調の波が続くと期待されていたが、新型コロナウイルスが流行。3月には感染拡大防止のため、上新電機やエディオンなど量販店各社が営業時間短縮に踏み切った。インバウンド客の減少がマイナスに響く一方、花粉症対策などで空気清浄機が大きく動いた。テレワークや小中学校の臨時休校に伴いPC関連商品や自宅で遊べる玩具類も堅調に推移している。

 地域店ではイベントや顧客訪問を自粛する流れに。春夏合展や個展の開催中止を心配する店も多い。一方で、キャッシュレスポイント還元期間である6月末までの需要に大きく期待し、エアコンの早期提案やデジタル放送完全移行期からの買い替えに向けたテレビの拡販に力を入れる。