2020.03.25 【関西エレクトロニクス産業特集】5GやIoTなどの取り組み 近畿総合通信局 佐々木祐二局長に聞く
佐々木 局長
ローカル5G導入促進 サイバーセキュリティも課題
-今月25日、待望の5G商用サービスが始まります。
佐々木局長 5Gへの関心の高さはこれまでになく感じている。特定のエリアで5G技術を柔軟に利用できるローカル5Gについては、多くの相談を受けている。近畿管内では3月20日までに、ローカル5Gで2局の免許申請があった。
ローカル5Gでは地域のニーズに応じるため、現在免許申請を受け付けている28ギガヘルツ帯のほか、今後4.6-4.9ギガヘルツ辺りの周波数帯も使用できるようになる。
近畿総合通信局は昨年10月に続き、2月に東大阪市でローカル5G導入のためのセミナーを開催、多くの人に参加していただいた。令和2年度予算案ではローカル5Gの開発実証を行う計画で、関西地域でも多様な5Gの導入を促進したい。
なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、次のローカル5G導入に関するセミナーの開催は未定だが、個別の相談に積極的に応じるとともに、ローカル5Gの支援体制を強化していきたい。
-5Gや4K・8K時代における光ファイバの整備への取り組みは。
光ファイバへ移行
佐々木局長 5GやIoTを多くの国民に利用してもらうには、光ファイバ網が基盤となる。4K・8K放送も18年12月に始まり、高速・大容量通信網が不可欠になってきた。
近畿総合通信局ではネットワークの光化を推進している。光ファイバ網は構造上、災害に強い側面もあり、近年に全国で大規模自然災害が多発している現状を考えると、伝送路の途中で増幅のための電源を要する同軸ケーブルから光ファイバへの移行を進める必要がある。
また、光ファイバ未整備地域については、都会と地方の情報格差を縮小させるためにも、整備を促進していきたい。
条件不利地域を対象として、令和2年度予算案でも光化予算として約53億円が計上されている。
-近畿地区でのサイバーセキュリティ対策も動きだしましたが。
佐々木局長 サイバー攻撃は大規模化、巧妙化しており、その対策は喫緊の課題になっている。近畿総合通信局は、近畿経済産業局、関西情報センターと共同で、政府のサイバーセキュリティ月間(2月1日-3月18日)に合わせて普及啓発活動に取り組んだ。
最近では、対策が不十分な中小企業などから侵入するサプライチェーン攻撃への対処や小規模自治体のサイバーセキュリティ対策が課題である。自分のところはまさか狙われるようなことはないだろう、といった認識は危険だと思わないといけない。
中小企業経営層を対象としたサイバーセキュリティ演習など、今月予定していた計画がいくつか中止になったが、取り組みは継続していきたい。
-インバウンド観光客に対して、IT利用という観点からの対策は。
佐々木局長 新型コロナウイルス感染拡大の影響で観光客が激減していることは心配だが、いずれ収束するだろう。
「けいはんな」にある総務省所管の情報通信研究機構(NICT)が、30余年にわたって多言語音声翻訳の研究開発に取り組んできたが、ディープラーニング(深層学習)の実装などによって翻訳精度は大きく向上しており、現在では全部で31言語に対応できるようになっている。これまで今年の東京五輪・パラリンピックに向けて研究を進めてきたが、25年の関西万博では同時通訳システムが実用化されることを目指しており、大いに活用されることを期待している。
-万博に向けて今から取り組むことは。
佐々木局長 昨年4月に5G開設計画の認定が行われたが、計画の前倒しなどを進める税制について国会で審議されることになる。5G網整備の促進に加え、多様なローカル5Gが社会実装され、関西の魅力、活力を世界に発信できるように取り組んでいきたい。