2024.01.12 【放送/機器総合特集】放送機器各社 24年の戦略 住友電気工業 貴田渉ブロードネットワークス事業部事業部長
貴田 事業部長
FTTHやIPシステムで、CATVの高度化など支援
日本ケーブルテレビ連盟が提唱した、2030年に向けたケーブルテレビ(CATV)戦略「2030ケーブルビジョン」に沿った製品・サービスの開発に取り組んでいる。今年はさらに具体的に進める年として、放送、ネットワーク、ワイヤレスを重点にCATVのシステムインテグレーターとして対応、支援していく。
CATV事業者の光ファイバー網の整備に、より信頼性の高いFTTH化対応製品を提供している。その中でも従来のPONシステムの10倍の伝送速度を実現する10G-EPONシステムは、高密度実装により省スペース化やコスト削減を実現でき、好評だ。現在、100局以上のCATV事業者に採用されている。
装置の故障や伝送路の障害などに対し、ネットワークの二重化や強靭(きょうじん)化ではより高い信頼性が求められている。
昨年は10ギガのOLT装置と光スイッチを組み合わせ、OLTのカードや光リンクの故障時には自動的に切り替える冗長化システムを開発し、OLTの回線カードやPON区間の冗長化の実現に貢献した。同システムは光リンクまで冗長化できるのが当社独自の強みだ。今後も高信頼性と高機能化(保守性向上)を図る。
一方でFTTH化における課題として、棟内の管路への光配線が難しい集合住宅の光回線高速化がある。当社はCATV規格のDOCSIS3.1の技術を使い、1ギガのデータ通信を実現するシステム「Remote-PHY(サーバー管理型)」を提供し、より安定した高速サービスの実現に貢献している。
CATV業界では、FTTH化されたネットワークの利活用として、放送サービスのオールIP化に向けた動きが加速している。長年にわたりIPマルチキャスト放送に関わる事業を展開してきた当社は、これまで培ってきた技術やノウハウを生かして、CATVに最適なトータルシステムや装置の開発、標準化の推進に取り組んでいく。
また、長距離のヘッドエンド間伝送を、信号品質を維持したまま安定的かつ低遅延での伝送が可能なシステムとして、従来の光AM変調IF/RF伝送に代えて、IPによって伝送を行うRF-IP伝送システムを提案している。
4K/ACASの普及に向けては、STBやヘッドエンドまで豊富なラインアップを拡充している。
STBでは、4K/ACASマイグレーションを加速させるため、普及型4K/ACAS対応STB「ケーブルプラスSTB-2 mini」を昨年12月から販売している。4K放送対応チューナーを二つ搭載し、新規開発の放熱設計でファンレスを実現し静音性を向上させた。
今後、OTTサービスとの連携強化や機能充実に取り組むとともに、オールIP対応STBを含め、ラインアップをさらに充実させていく。
STBを活用したサービスとして、東京トラベルパートナーズによる視聴者参加型のリモート観光配信サービスに、当社のアプリ・システム技術を組み合わせ、自宅テレビで「旅介ちゃんねる」を視聴できるよう開発に取り組んでいる。4月からサービスを展開する予定だ。
ACASに対応した高度ケーブル自主放送サービスとして、高度化対応デジタルヘッドエンド装置「FLEXCITERシリーズ」を提案しており、放送サービスのさらなる高度化を目指す。
今後もCATV事業者のニーズにワンストップで応えられるよう、トータルサービスで提供できる体制と製品のラインアップ拡充を進める。