2024.02.09 【育成のとびら】〈19〉管理職になりたがらない女性 その背景にあるものは
企業において女性の活躍を推進したり女性リーダーを増やしたりすることは国の重要施策の一つになっている。投資家や若い世代の関心も高まっており、多くの企業がその実現に向けてさまざまな取り組みを推進していることだろう。しかし、実際は「適任と思われる女性に管理職着任を打診しても辞退される」「女性は管理職を引き受けたがらない」という声がよく聞かれる。
なぜ女性は管理職を引き受けたがらないのか。そして、どのような職場ならば女性の昇進意欲が高まるのだろうか。
今回、中原淳氏(東京大学准教授=当時、現・立教大学教授)と当社とが共同で行った大規模調査から、そのヒントを探してみたい。調査時期は2016年~17年だが、ワーキングマザー含む女性2523人、男性4879人を対象とした、他に類を見ない世界最大規模の調査だ。
この調査で、女性の昇進意欲に関する質問と、職場環境のさまざまな要素についての質問とをクロス集計したところ、「仕事の割り当てが男女平等である」と答えた職場においては、「昇進したい」層が50.0%、昇進したくない層が42.4%と、7.6ポイントの差が表れた(図1)。
別の研究によると、基幹的職務を多く経験した女性は昇進を希望する割合が高く、そうした経験が少ない女性は希望する割合が低くなるという報告もある(図2)。
この二つのデータから、「仕事が男女平等に割り当てられる職場で働く女性」と「企業の中核的な仕事を経験した女性」は昇進意欲が高まる傾向にあることが分かる。
裏を返すと、「重要な仕事が男性ばかりに割り当てられる職場で働く女性」や「限定的な仕事しか経験していない女性」は昇進意欲が低く、昇進を打診しても引き受けたがらないという傾向が表れるとみることもできる。
残念ながら、いまだに〝重要な業務やリーダーは男性が担うもの〟という思い込みがビジネス現場に限らず、スポーツや政治、教育など、さまざまな場面で見受けられる。また、女性は男性に比べて、自身の能力を低く見積もる傾向があるということも当社と中原教授の共著「女性の視点で見直す人材育成」(ダイヤモンド社)でも明らかにしている。
背伸び業務の経験を
男女を問わず次世代のリーダーを育成するためには、これまでの経験の延長線上にある未経験業務や、本人の力量よりやや難易度の高い業務である、いわゆる「ストレッチ(背伸び)業務」の経験が重要とされている。
こうしたストレッチ業務は社員の視野を広げ、成長したという実感の獲得につながるため、若手のころからストレッチ業務を適切に経験していくことは男女ともに健全な自己認識や成長意欲、昇進意欲の醸成に有用となるだろう。
次世代リーダー育成、そして女性管理職の養成のために、企業は男女問わずメンバー一人一人に合った適切なストレッチ業務を経験できる仕組みをつくることが大切だ。(つづく)
〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉
【次回は2月第4週に掲載予定】