2024.03.27 【関西エレクトロニクス産業特集】動き出した大阪城東部地区開発プロジェクト

森之宮キャンパス第1期のイメージ図(提供=公立大学法人大阪、竹中工務店・安井建築設計事務所グループ)

大阪公立大、25年森之宮キャンパス開設

新しいまちづくりに注目

 20世紀の大阪の発展を支えてきた「キタ」と「ミナミ」。この南北軸に加え、会場建設を急ぐ大阪西部の万博会場「夢洲(ゆめしま)」と、大阪城東側エリアの森之宮周辺、さらにその先の生駒を結ぶ東西軸が、21世紀の大阪躍進の新しい拠点として注目を浴びそうだ。

 大阪城東部のまちづくりでは大阪公立大学の森之宮キャンパス、地下鉄の新線と新駅、1万人以上収容の大規模アリーナ、「空飛ぶクルマ」の発着場の建設が計画されている。

 大阪府の吉村洋文知事は2月の「大阪城東部地区まちづくり検討会」の席で、「東西軸の発展が今後の大阪発展の鍵を握る」と開発に意欲を示した。

 大阪城東部地区は①イノベーション・コア②水辺空間+立体活用③多世代居住複合④拡張検討の四つのゾーンに区分され、大阪公立大が開設を進めている森之宮キャンパスは、新しいまちづくりの方向性においてイノベーション・コアゾーンの中核的役割を担う。

 同ゾーンには第1期のキャンパスと、2028年の完成を目指す1.5期にもう一つのキャンパスの計2棟が建設される。第1期として建設中のキャンパスは25年秋に開設予定で、地上13階建て、高さ60メートル。大阪城の天守閣から見て生駒山の稜線(りょうせん)を超えないよう建築上の配慮がされている。

 大阪公立大で森之宮キャンパス移転を担当する移転準備室の柴山敬室長は「(予備校などでは)高校生の間で森之宮キャンパスへの期待が高まっているようだ」と語る。統合前の府立大や市立大は都心から離れたキャンパスだが、森之宮はまさに大阪城の隣。「東京の私大のように、大阪でも〝都心回帰〟の志向が強くなっているのでは」と柴山室長。

 国際基幹教育機構、文学部と大学院文学研究科、医学部リハビリテーション学科と大学院リハビリテーション学研究科、生活科学部食栄養学科と大学院生活科学研究科などが新キャンパスに移転し、学生、職員合わせて約6000人が利用する見込みだ。

 28年春の「まちびらき」を前提として建設される1.5期の森之宮キャンパスには、民間の活力を導入した大学施設、大規模集客施設、交流施設が入る。

 大阪府・市では森之宮キャンパスの整備費として第1期で452億円、1.5期で50億円、計502億円を予定。費用は府と市で折半する。

 大阪城東部地区まちづくりには交通機関の立場から大阪メトロも参画。次世代モビリティーの実装や次世代交通ターミナル、次世代鉄道システムを導入した新駅と交通体系の一体化を提案している。

 府立大、市立大の統合発表時には「学問の自治」や「学問の独立」を理由に反対の声も挙がった。「府市合わせ」とやゆされた新大学だが、統合後3年の助走期間を経て、25年には大阪城東部地区の「知の森」へと飛躍しようとしている。