2024.04.05 【やさしい業界知識】SMT業界
家電製品や電子機器の重要な製造プロセスを担う表面実装機を中心としたSMT生産ライン
半導体、部品など基板に配線
日系企業が世界で高いシェア
SMTは「Surface Mount Technology(表面実装技術)」の略で、電子機器や家電製品に搭載されている半導体や電子部品、液晶、モーターなどを組み合わせて基板へ配線する、重要なプロセスだ。
半導体が誕生する以前は真空管が使われ、「シャシー」と呼ばれるアルミなどの筐体(きょうたい)に部品を取り付けて配線していた。1970年代に入って登場した半導体が使われるようになってからは、配線もプリント基板に部品を搭載する方法へ変わっていった。
当初はプリント基板に穴を開け、リード線の付いた部品を挿入してはんだ付けしていた。80年代から、リード線をなくした部品をプリント基板に搭載するSMT工法が開発され、現在の主流になっている。
4工程から成る
SMTは、基板に印刷された配線回路にスズを主成分とした合金はんだを印刷する「はんだ印刷機」、部品を基板に搭載する「表面実装機」、溶かしたはんだで部品を電気的に接続する「はんだ付け装置」、部品が正確に搭載されているかを確認する「外観検査装置」の4工程から成る。
それぞれの装置を開発する専業メーカーや製造、販売に関わる企業を含めて全体を「SMT業界」と総称する。
表面実装機は、プリント基板に部品を1個ずつ、マイクロメートル単位の精度で搭載する装置だ。例えばスマートフォン向けには、0201サイズ(0.25×0.125×0.125ミリメートル)の超小型部品を1秒間に約30個搭載する。
主要メーカーには日本のFUJI、パナソニック、ヤマハ発動機、JUKIがあり、世界シェアのほとんどを日系が占めている。海外ではASMなどがある。外観検査装置では、韓国企業なども健闘している。
日系SMT関連装置の需要は、これまで中国の比率が80~90%を占めたが、最近は消費地で生産する「地産地消」の観点から、東南アジアなどにも広がっている。5G通信、IoT、EV(電気自動車)、カーボンニュートラル、DX(デジタルトランスフォーメーション)、生産の自動化など時代の潮流が進展する中で、新たな電子機器が登場し、日本のSMT業界が担う役割は大きい。
スマート化の波は、SMTラインにも押し寄せている。表面実装機とはんだ印刷機などをLANで結び、生産情報をデータ化する。装置間でデータ連携するM2M(マシンツーマシン)により、SMT工程の最終の検査装置の段階で部品搭載漏れなどの不具合が見つかれば、その情報を実装機へ送り、自動的に修正し、不良生産をなくすことができる。
稼働状況を一目で
海外工場の装置1台1台の稼働状況も、日本に居ながらにして確認することが可能になる。工場のスマート化はやがて無人化、完全自動生産化へと進化し、モノづくりに革新的な変化を起こしそうだ。(毎週金曜日掲載)