2024.08.23 【育成のとびら】〈32〉中堅社員「仕事の量」への不安、「大変」「不満」「我慢」

 組織の中核として事業の推進を担う中堅社員。成果を期待されるものの、新入社員や管理職に比べて組織による育成施策の優先順位が低くなりがちなことから「育成の空白地帯」とも呼ばれている。

 私たちALL DIFFERENTはそんな中堅社員のあるべき育成の姿を探るため、社会人歴5年以上で管理職未満の社員を「ミドルキャリア」と位置付け、2023年9月にラーニングイノベーション総合研究所とともに600人に対して調査を実施した。

 調査により、ミドルキャリアは「自分の知識・スキル」や「仕事の量」に対する不安、「上司との人間関係」の苦労が最も多いことが明らかになった。今回は「自分の知識・スキル」の次に多かった、「仕事の量」に対する不安について詳細を探ってみたい。

 「仕事の量が多いと感じることがあるか」との質問では、「どちらともいえない」と回答した層を除くと、「ある」と答えた割合は社会人6年目と9年目では半数以下だったが、そのほかの年次では6割以上だった(図1)。

 さらに、「仕事の量が多いと感じたことについてどう捉えたか」と聞いたところ、「大変と感じた」が37.7%で最も高く、「不満を抱いた」(21.9%)、「我慢した」(18.1%)と続き、ネガティブな受け止めが上位を占めた(図2)。

 知識・スキルへの不安では「成長の機会と感じた」「負けたくない・乗り越えたいと感じた」と前向きな回答も上位に現れたのに対し、仕事の量への不安では「期待に応えようと感じた」(17.0%)が4位、「成長の機会と感じた」(14.3%)が5位、「負けたくない・乗り越えたいと感じた」(13.6%)が6位と、いずれも上位にこなかった。

 ミドルキャリアは仕事の量の多さに対して、後ろ向きの感情をためている様子がうかがえる。

不安解消の鍵

 ミドルキャリアは新入社員・若手社員と比べて、任せられる仕事の量が増えるだけでなく、成果目標なども求められ、仕事の質も上げなければならない。参加する会議も多くなり、手掛ける業務の幅を広げることも求められる。そのため、単に業務をさばくスピードを上げるだけでは「仕事の量」への解消に行き詰ってしまうリスクが高い。

 さまざまな業務を同時に効率よく進行させるためには、タスク(任された仕事)を分解し、優先順位を適切につけるスキルや、会議のファシリテーションスキル(円滑に進行する能力)、手戻りが発生しないコミュニケーションスキルなどが欠かせない。これらの知識・スキルの獲得が「仕事の量」への不安解消につながるだろう。

 しかし、業務に追われているミドルキャリアにおいて、自らスキルアップし解決できる人材は限定的だろう。ミドルキャリア個々人の取り組みも重要だが、周囲のサポート体制の整備も不可欠だ。組織として「育成の空白地帯」の支援に取り組むことで、会社全体の成長スピードが格段にレベルアップしていくことだろう。(つづく)

 〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉

 【次回は9月第2週に掲載予定】