2024.08.30 【ソリューションプロバイダー特集】各社の事業戦略 日本事務器 田中啓一社長
変化に反応し顧客支援
創業100周年の感謝を届ける
昨年上期は電帳法改正とインボイス制度対応という特殊要因があったが、旺盛なDX需要を背景に今期も堅調を維持している。医療現場など人手不足を解決する手段としてデジタル化の需要は依然として高い。
特に、生成AI(人工知能)に絡む相談案件が増えてきた。提供するシステムの競争力を上げるとともに、セキュリティー面などへの懸念を抱く経営者に寄り添って導入を後押ししていきたい。
そのためにも、トライアルプロジェクトを立ち上げ、社内規定の問い合わせ対応やデータベース化などの研究を、社内だけでなく顧客にも協力いただいて進めている。また、社員自身にも生成AIを活用できる環境を用意し、アイデアを広げ経験を積んでほしいと考えている。
販売管理システムなどの基幹システムでは、大枠の仕組みを当社が構築した上で、ノーコード・ローコードで顧客企業自身がカスタマイズするといった方法も話題に上がり始めている。
成果が上がっているのが、保守運用やサイバーセキュリティー対策も含めた、サブスク型ビジネスだ。既存領域、成長領域、創造領域と3階層に分け事業展開を進め、売上高全体の50%超をサービス型にしていきたい。
従来の売り切り型のビジネスに比べ、クラウドベースでサービス化することによって顧客企業は常にアップデートされた最新のシステムを使うことができ、運用負担の低減にもつながる。
ヘルスケア分野では、後半戦に向けて電子カルテに対応した医事システムなど医療DXの需要が活発化している。
医療や物流現場では人手不足が深刻化しているが、単なる労働時間の管理だけでなく、生産性を上げる仕組みが求められている。医療現場なら、ナースステーションに大型ディスプレーを配置し、看護師が席に座ってパソコンを開く手間を省くなどが考えられる。スーパーやコンビニへの物流では繁忙期を踏まえた配送計画システムで運転手を効果的に配置するなど、現場に寄り添ったDX支援を展開していきたい。
新たな事業創造では、農家と市場、青果卸をつないで食産業を支援するコミュニケーションツール「fudoloop(フードループ)」が軌道に乗り始めた。各農家に電話で出荷量を問い合わせしていた市場職員の業務が削減されたなどと好評だ。
当社は、今年2月1日で創業100年を迎えた。全てのステークホルダーに感謝を伝える取り組みを進めている。変化の激しい世の中で、これからも常に「価値ある企業」「必要とされる企業」であるために、変化に柔軟かつ俊敏に反応し顧客の経営をサポートできる企業でありたい。