2020.06.19 【5Gがくる】<1>コロナの襲来でローカル5Gが加速
世界では新型コロナウイルスの感染拡大が一気に広まっている真っただ中、日本でも今年3月、一部の施設やスポットで高速通信「5G」(第5世代高速通信規格)の商用サービスが始まった。
高速、大容量などと言われているが、実は私たちが使うスマホで精細な動画をサクサク楽しめるだけが5Gではない。
さらに「ローカル5G」という新たな言葉も出てきた。5Gで世界が変わるというが、5Gの世界とはいったいどういうものだろう…。
社会が急激に変化
コロナの襲来によって、社会は急激に変化した。ステイホーム要請の下、企業の多くがリモートワークを余儀なくされ、社内の打ち合わせのみならず、顧客との商談もオンライン会議を利用して自宅のPCからやっているのが現状だ。大学でも急きょオンライン授業に切り替えたところが少なくない。
教員たちは自宅で講義の自撮りから編集、動画ファイルの作成まで対応に悪戦苦闘している。動画を配信しても、さらに難題に直面するという。
それは、学生側のネットワーク問題だ。
学生の多くはPCを持っておらず、スマホで受講する。モバイル回線から動画をダウンロードすると、あっという間に契約通信容量の上限をオーバーし、〝ギガ不足〟となってしまうのだ。
もちろん、自宅に光回線などの固定インターネット環境があれば、スマホをWi-Fiに接続すればよい。
しかし、同居している親がリモートワークでオンライン会議中のケースも少なくない。同じ回線の帯域をシェアしなければならないので、双方の画像や音声が途切れてしまう。各戸で帯域をシェアする集合住宅ではなおさらである。
ネットワークが障壁
新たな生活様式が求められている今、この「ネットワーク問題」は大きな障壁になろうとしている。コロナによる緊急事態宣言前と比べ、固定回線の昼のトラフィックは2倍、モバイル回線は数十%の割合で増加している。
それでも、もともとのピーク時である夜のトラフィックを下回っているため、現時点では通信事業者側のネットワーク帯域は安定的に確保されているという。
つまり今家庭で抱えている問題は、ユーザーへ引き込まれる固定回線、いわゆる「ラストワンマイル」にボトルネックがあるといっても過言ではない。
この解決に期待できるのが、高速大容量、低遅延、多数同時接続が実現できる5Gだ。
さらにマンションや工場などに自ら基地局を置き自営でネットワークが敷ける「ローカル5G」は、Wi-Fiで解決できない現在のネットワークの様々な課題解決の幅を広げる。
高層化や大規模化が進む集合住宅にローカル5Gを導入すれば、先ほどのボトルネックを即座に解消できる。
遠隔授業や在宅勤務だけではない。まさに今、喫緊の課題である遠隔医療やロボットの遠隔操作もしかりだ。コロナの襲来は、5Gだけでなく、ローカル5Gの導入を加速させそうだ。
〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師 竹井俊文氏〉