2025.01.10 【放送総合特集】25年 年頭所感 民間放送連盟 遠藤龍之介会長
遠藤 会長
新たな挑戦と成長の機会へ
変化を恐れずに進む
2025年の幕開けに当たり、所感の一端を申し述べ、新年のごあいさつとさせていただきます。
1年前の元日、私たちは能登半島地震という大きな災害を経験し、夏には日本各地を豪雨が襲いました。こうした災害により、今なお避難生活を余儀なくされている方がいます。民間放送は、発災時に人びとの命を守る情報を届けるだけでなく、それに続く復旧・復興期に、被災された方を勇気づけ支援するための役割もあります。過去の教訓や経験を踏まえて、激甚化する自然災害から命と暮らしを守るために私たちは何ができるのか、何をするべきなのかを考え、今年も取り組んでまいります。
昨年は明るい話題もありました。夏に行われたパリオリンピック・パラリンピックは、日本人選手の活躍もあって大変盛り上がりました。流行語を生み出すようなヒットドラマもありました。放送を通じてドラマやスポーツなど魅力的なコンテンツや話題を数多く提供できた1年だったように思います。
良質なコンテンツがいつの時代も人びとの心を捉え続けてきた一方で、民間放送を取り巻くメディア環境は激変し、多様なプレーヤーが余暇時間を獲得しようと競い合っています。視聴者・リスナーのニーズを的確に捉え、それに応えるコンテンツを届けるためには、自らのクリエーティビティーを磨き上げることが、これまで以上に必要です。生成AIなどの新しいテクノロジーを研究し、積極的に取り入れることも欠かすことができません。
目覚ましいスピードで進化する先端技術が生活をより便利にする半面、現在のデジタル情報空間では、フィルターバブルやエコーチェンバーによる社会の分断、不確かな情報や無責任な言説の氾濫が問題となっています。事実に基づいた信頼性の高い情報、明るく楽しい健全な娯楽など、安心して接していただけるコンテンツを届ける私たちの責任が一層増していることは言うまでもありません。
全国に瞬時に映像や音声を輻輳(ふくそう)なく届けることができる放送の機能、それぞれの地域に根を下ろし、その発展に貢献してきたローカル局の存在など、放送にはこれまで培ってきた豊かな実績と歩みがあります。放送の存在意義を客観的に再検証した上で、その価値を社会に伝えていきたいと思います。
25年は、み(蛇)年です。蛇は古来から再生と変化の象徴とされています。日本での放送開始から100年を迎える本年が、放送界にとって新たな挑戦と成長の機会になるよう、しなやかに、変化を恐れずに進んでいきましょう。皆さまにとって希望に満ちた素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。