2025.01.17 【情報通信総合特集】情報サービス トップに聞く 25年の見通し・経営戦略 東芝デジタルソリューションズ 月野浩取締役常務ICTソリューション事業部バイスプレジデント(東芝常務執行役員)

差異化できる領域強化

DX施策や生成AI利用本格化

 2024年は官公庁から製造、流通、金融、社会インフラまで堅調に伸ばせた。クラウドへの移行など、デジタル化が各業界で進んでいるとみている。この一年は当社の強みとしてきた製造業向けDXや気象データサービス、ブロックチェーン、量子暗号通信の領域で実績が出始めている。25年は当社技術で差異化できる領域を強化し事業を拡大していきたい。

 DXへの施策はさらに進み生成AI(人工知能)の活用も本格化してきた。現在は社員DX、顧客接点DX、プロセスDX、モノづくりDXの4領域で取り組みを強化。プロセスDXではグループの東芝デジタルエンジニアリングが保守が困難になったシステムをAIで解析し、安定稼働を支援するリバースエンジニアリングサービスを始めた。モノづくりでは製造業向けソリューション「マイスターシリーズ」に生成AIを組み入れ、設計、調達、製造、保守、サービスの高度化を支援している。

 ITとOT(運用制御技術)を組み合わせた製造現場のDXに向けては東芝インフラシステムズと連携して支援を進めてきた。昨年は東芝インフラシステムズが産業用コントローラー(PLC)をクラウドで管理するサービスを開始。国内では東芝グループが初めてサービス化しているため、工場のスマート化に向け提案を強化していく。

 気象データのサービスも実績が出てきた。気象レーダーで培った解析技術を活用し、降雨予測や降雹(ひょう)予測ができる。昨今の異常気象で雹害が増える背景もあり、三井住友海上と東京海上日動に降雹予測サービスを提供。雹害保険サービスに適用している。天候予測の需要は多方面で求められており今後も提案の幅を広げていきたい。

 量子暗号通信ではBTグループとエクイニクスとデータセンター間での量子ネットワークのサービスを開始。実証から商用利用への動きが出てきた。量子インスパイアード最適化ソリューション「SQBM+」はIT創薬でも注目されRevorfに出資した。ブロックチェーンは、物流や自治体で実績が出ており、さらに提案を強化する。

 こうした成果は、新規事業創出を目指し東芝グループで展開する「オープンイノベーションプログラム」から生まれているものも多い。昨年も7社と協業開始を決めた。誰でもIoTを簡単に作れるifLinkも190社が参画するまでになりビジネスも立ち上がってきている。社内だけでなく社外との連携を積極的に行い、新たなイノベーションにつなげていきたい。

 25年も引き続きデジタルを中心に事業を拡大して行く見通しで、リソースの最適化やパートナー連携を密にしていく。成果になりつつある事業領域をさらに強化し、拡大させたいと考えている。