2025.02.03 “周回遅れ”の日本、本命「マター」広がるスマートホーム市場 AI軸にパーソナライズ化も
スマートホームの最新事情について説明する新貝氏
日本のスマートホーム市場は周回遅れ――。スマートホーム専門のコンサルティングを行うX-HEMISTRY(ケミストリー、東京都豊島区)の新貝文将CEO(最高経営責任者)は、国内のスマートホームの現状を米国などと比べてこう分析する。
新貝氏は、スマートホームの標準規格団体「Connectivity Standards Alliance(CSA)」の日本支部会長も務める。CSAは、スマートホームの通信規格として本命視される「Matter(マター)」や、スマートロックの標準規格「Aliro(アリロ)」などの策定を進めており、日本支部では加盟する企業間で情報共有をしている。
新貝氏は「CSAへの参加は日本企業も30社を超えた。毎月のように参画する企業が増えている」と話す。
スマートホームへの関心が国内でも高まりつつあるとする一方、米国などに比べて普及の遅れも指摘する。
新貝氏は、米国ラスベガスで1月に開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2025」を視察。その報告会を東京都内で開催した。CESでは、「マター祭り」と評するほど対応機器が爆発的に増え、複数のセンサーを使うなどで空間全体をセンシングする「アンビエント・センシング」の立ち上がりなどを踏まえ、「(スマートホームで)パーソナライズできる環境が現実味を帯びてきた」と力を込めた。
家電やIoT機器との連携といった側面が強かったスマートホームは、各種センサーやAI(人工知能)、サービスなどとの掛け合わせで対象領域を拡大。ヘルステックやフードテックなど住空間とも親和性の高い領域と連携した対応が進展しているとした。特に、韓国サムスン電子のスマートホームのAI戦略を「AIオーケストレーション」(新貝氏)と表現し、家電をはじめさまざまな機器で「横断的なAIを作ろうとしている」と分析した。
フォーチュン・ビジネス・インサイツの調査によると、スマートホームの世界市場は、2024年の1215億9000万ドル(約18.8兆円)から32年には6332億ドル(約98.1兆円)に成長すると予測している。その間の年平均成長率(CAGR)は2割以上と高水準だ。
マターはグーグルやアマゾンなどビッグテックが後押しする規格。日本市場にも対応機器が発売されるようになってきたが、海外に比べるとスピード感に欠ける面も。巨大市場が予想されるスマートホームで明暗を分けかねないマター対応で、日本企業の出方が問われている。