2025.03.28 中小企業で「日の丸半導体」復権へ、開発・設計を「民主化」 産総研が新たな一手
開発案件を積極的に提案すると話す藤巻副本部長
政府支援のもとで復権を目指す「日の丸半導体」。ラピダスやTSMC(台湾積体電路製造)の動向が注目を集める中、その根幹を支える中小企業への支援が新たな焦点となっている。産業技術総合研究所(産総研)が100%出資するAIST Solutions(アイストソリューションズ、東京都港区)は、科学技術とマーケティングを掛け合わせ、中小企業やスタートアップの挑戦を後押しする存在だ。
2023年4月に設立した同社は、産総研の知的財産(IP)や研究設備などを活用し、企業や研究機関との共創を推進。「待ち」の姿勢だった従来の産総研とは異なり、企業に対し具体的な提案を行い、事業化をリードすることを目指している。プロデュース事業本部の藤巻真副本部長は「CTO(最高技術責任者)に提案するなどし、事業共創のスピードや規模を重視している」と語る。
特に注力しているのが「AI・半導体」だ。中小企業の参入障壁となっていたEDA(電子設計自動化)ツールやIP、ファウンドリーとのNDA締結といった課題に対応するため、アイストは24年4月、一般社団法人のOpenSUSI(オープンスシ)を立ち上げた。NDA不要で設計可能な環境を整備し、半導体設計に必要な情報をまとめたPDK(プロセス・デザイン・キット)を公開。中小企業がチップ設計しやすい体制の構築を目指している。
OpenSUSI代表理事で、アイストのAI・半導体チームの事業プロデューサを兼務する岡村淳一氏は「オープンソースによる半導体開発の民主化」を掲げる。ソフトウェアの世界で当たり前となったOSS(オープン・ソース・ソフトウェア)の考え方を半導体分野にも応用し、国内中小企業が国際競争力を持てるよう支援したい考えだ。特に生産量が少ない「ロングテール半導体」の分野で、差別化とコスト低減を両立させる。
同様の動きは海外でも進む。米グーグルは22年から「Open MPW」プログラムを展開し、ドイツのライプニッツ研究所もPDKのオープン化を進めている。日本でもOpenSUSIを軸に、国内ファウンドリーや半導体商社との連携を強化することで、エコシステムの構築を目指していく。
25年はOpenSUSI設立2年目。参画企業の拡大や、6月に予定されるイベントの開催を通じて、国内外との連携を強化していく。アイストとOpenSUSIの取り組みは、中小企業の挑戦を支え、「日の丸半導体」を足元から支えることになりそうだ。
<執筆・構成=半導体ナビ>