2025.04.16 米ADI 48Vシステム対応製品を加速 データセンターや自動車の消費電力増に対応
ウィット氏は「小さな面積でより大きな電力を供給できるようにすると意気込む」
半導体大手の米アナログ・デバイセズ(ADI)は、電力の供給源を担う電源システムの電圧を12ボルト(V)から48Vに移行するという新潮流に対応した製品の展開を加速している。同システムが支えるデータセンターや自動車で消費する電力が増大する中、12Vシステムが限界に近づきつつあるからだ。
ADIは、電源システムをめぐるニーズの高度化に対応。直流の電圧変換を行う「DC-DCコンバーター」などで、48Vに対応した製品を製造している。電圧が上がれば電流は下がり、結果的に電力の損失も減少。エネルギー消費量を抑制する効果を、AI(人工知能)需要に応えるデータセンターや知能化が進む自動車分野にもたらすことができる。
48Vから12Vまで降圧し80アンペア(A)の電流を流すことができるのが、複数の電力変換方式を組み合わせたハイブリッド・コンバーター「LTC7822」だ。回路構成がシンプルな自社のバック・コンバーターとの比較で、4倍の電流を流せる。98.5%と高い電力効率も備え、面積も小さい。
ADIマルチマーケット・パワー製品事業部でマネージング・ディレクターを務めるジェフリー・ウィット氏は、LTC7822について「(回路は)複雑だが、その分パフォーマンスの面でメリットがある」と胸を張る。
48Vシステムの展開で直面する課題が、検査装置や通信に影響を及ぼすノイズの問題。検査装置などに搭載するコンバーターをスイッチングで電流を制御する方式にすると、使用電力の増加に伴ってノイズも増えてしまう。
そこで、ADIはスイッチング制御を行わず直接降圧する「リニア・レギュレータ―」を手掛けている。中でも低い電圧で作動する「LDO(Low Drop Out)レギュレーター」では、業界トップクラスの低ノイズ製品を展開。現行製品の「LT3045」に加えて、より効率に優れる「LT3074」も開発した。
とはいえ、より大きい電流を流そうとすると、LDOは「スイッチング・レギュレーター」に比べて、効率の面で劣ってしまう。こうした課題も踏まえ、同製品で低ノイズを実現できる「Silent Switcher 3」という技術を開発した。
「これまでよりも小さな面積でより大きな電力を供給できるようにするというのがわれわれのミッション」とウィット氏。電源システムの48Vシフトに意欲を示すADIの戦略から、今後とも目が離せない。
〈執筆・構成=半導体ナビ〉