2025.04.25 中国の参入で「スマート家電市場」活況 日本勢に迫られる国際規格対応

新貝氏(左)とミア氏

新発売のアカラ M100ハブ新発売のアカラ M100ハブ

アプリから照明の調光も可能アプリから照明の調光も可能

 インターネットに接続して便利に使える「スマート家電」が、家電量販店の店頭やEC(電子商取引)サイトをにぎわしている。海外製の選択肢も広がり始めた。家電を快適に使えるようにする通信規格の進化も追い風に、日本のスマート家電市場が一段と活気づきそうだ。

 日本市場の開拓を目指す企業の一つが、先進技術で快適性を高めた次世代住宅「スマートホーム」向け製品を手掛ける中国・深センのLumi United Technology(ルミユナイテッドテクノロジー)だ。2024年に国内市場に初めて参入し、ブランド「Aqara(アカラ)」を展開。24日には、手が届きやすい価格で他社のスマート家電も操作できるコントローラーハブの先行販売を通販サイト「アマゾン」で始めた。

 新製品の「アカラ M100ハブ」(税込み3180円)は、スマート機器を接続して制御できる。近距離無線通信のブルートゥースよりも安定性の高いメッシュネットワークを構築する無線接続「Thread(スレッド)」を採用しており、通信エラーを起こしにくいという。

 アカラブランドマネージャーのミア氏は、「日本市場は開拓の余地がある。グローバルに展開していても日本市場に参入しない企業は多い」と語る。

 参入を後押ししたのが、スマートホーム機器の互換性を高めるための国際標準規格「Matter(マター)」で、M100ハブもマターに対応させた。

 アカラには、マターに対応していない製品もある。M100ハブは、マター非対応の製品をマターに対応させる機能を備えることに加えて、製品独自の機能を損なわずに一括管理するアップルの「ホーム」アプリ上で活用できるようにした。

 そもそもマターは、米グーグルをはじめとする巨大テック企業が協力して22年に生まれた通信規格だ。米アップルの「HomeKit」や米アマゾン・ドット・コムの「Alexa」といったスマートホーム関連サービスを生かすと、マターに対応したIoT家電などを遠隔で制御できるようになる。まさにメーカーやブランドに関係なく、さまざまな製品が相互に通信し動作できるようになるわけだ。

 マター対応製品は、スマートフォンの2大OS(基本ソフト)である「iOS」と「Android」が標準的にサポート。対応製品に表示されたQRコードをスマホで読み取るだけで、手軽に製品を便利に操れるようになる。

 こうしたマター対応製品の種類は照明やスイッチから大型家電やエネルギー関連機器まで急拡大しているが、国内ユーザーの認知度は低いのが実情だ。

 スマートホーム事業を手掛けるX-HEMISTRY(ケミストリー、東京都豊島区)でCEO(最高経営責任者)を務める新貝文将氏は、マターを国内に認知させる必要性を説く1人で、マターを策定する団体「Connectivity Standards Alliance(CSA)」の日本支部代表として啓発活動に力を入れている。CSAには世界各国から800社以上が参画し、日本企業の加盟数も徐々に増え始めている。

 だが、日本市場を見ると、マター対応製品の選択肢が限られているため、消費者がスマートホームの恩恵を十分に受けられていないのが現状だ。

 新貝氏は、海外製マター対応製品の輸入をきっかけに日本市場にも対応製品が広がると見ている。「アップルで(マター対応の)スマートホーム機器を広げる取り組みを仕掛けていきたい」。マター対応機器を一括管理できるホームアプリを標準装備したiPhoneの普及率が高い日本の環境を生かした展開が、日本がスマートホーム分野で巻き返す鍵と言えそうだ。