2025.05.15 【小売り・流通の新潮流】「クラファンではない」 成長戦略が新たなステージに マクアケの中山亮太郎社長に聞く㊤
「クラウドファンディングと思っていない」と語る中山社長
新しい商品や体験の応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」を2013年に起業して以降、小売り・流通業界に新風を注ぎ続けているマクアケ(東京都目黒区)の中山亮太郎社長。25年9月期から3カ年の中期経営計画には、「事業成長パートナー」へ進化する目標を掲げた。中山社長のインタビューを2回に分けて掲載し、13年目を迎える同社の成長戦略を浮き彫りにする。
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―13年5月にサイバーエージェント・クラウドファンディング(現マクアケ)を設立し、同年8月に応援購入サービスを開始。そこで実施するプロジェクトは累計で4万件超に達しました。このクラウドファンディング事業はどう進化してきましたか。
中山社長 マクアケは「クラウドファンディング事業」としてスタートしたが、現在はクラウドファンディングと思っていない。マクアケのプロジェクト実行者の中には資金調達が目的でない事業者も多く、創業から3年ほど経ってから「何か違う」と思い始めた。
マクアケは新商品・サービスを先行販売できるマーケットプレイスとして利用してもらっているが、それだけにとどまるのは物足りないと考えた。
「0次流通」に焦点
―巨大な小売り・流通市場でゲームチェンジャーとしての地位を確立しました。今後の目標は。
中山社長 事業成長パートナーに変革するという目標だ。17年からは、製品が一般市場に流通する前のテストマーケティングの場「0次流通」にフォーカスし、事業成長につなげてきた。実力もありアイデアも持っていても実現できない事業者は多く、そのニーズに応えてきた。
マクアケは新たな商品や体験の「プラン」作りから始めて「デビュー」させ、一般市場に流通させる「グロース」を一気通貫で支援できることが強み。今後もそうした価値を生かし、新商品・サービスをアピールしたい事業者を後押しする。
データで販売促進
―4月には、リサーチサービス「Makuake インサイト」を発表しました。
中山社長 当社だけでなく、事業者側もインサイト(洞察)分析を行えるようにするサービスだ。マクアケ内に蓄積したデータに基づき新製品の企画や販売戦略の立案まで支援し、生活者(応援購入するサポーター)にマッチした商品を拡販できるようにする。
大企業しかできないサービスではなく、プラットフォーマーとして中小企業も活用できるようにした。
―Makuake インサイトで、マクアケと事業者の関係をどのように変えていきますか。
中山社長 商品デビューだけの付き合いを「半永久的な関係性」にしたい。こうした関係を強固にすることで、小売り・流通業で新たなポジションを築いていきたい。競合はなく、協業できる企業は多いと感じている。
事業者支援に磨き
―事業成長パートナーに求められる力は何でしょうか。
中山社長 「総合セリングパワー(販売力)」をどれだけ高められるかが大事になる。販売力を強化するために、プロジェクトの魅力を最大限に引き出し、それをターゲットにどのように伝えていくか。そうした課題にはこれまでに内製化で培ったノウハウで、対応していきたい。
―今後の事業で重視する課題は。
中山社長 Makuake インサイトとグロースを通じて生活者にもたらす提供価値をいかに標準化するかだ。そのためには、継続的な取引が大事だ。事業者がマクアケを有効活用できるよう伴走し、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回しやすくしたい。
―マクアケに出品する事業者を増やすことも重視しています。
中山社長 商品を販売する場やルートを事業者に提供することで、ヒット商品が積み上がっていくイメージを持っている。一つの商品を多く販売する「一本足打法」よりも、適切なタイミングで新商品を生み出せるようにする。そうした考えで、Makuake インサイトのレベルアップを図っていく。
(つづく)