2025.05.26 「AI×CAE」で自動車開発を加速 設計支援各社がイノベーションに注力
トヨタシステムズの展示ブース
自動車の設計・開発プロセスが、目を見張る進化を遂げている。それを印象付けた展示会が、横浜市西区のパシフィコ横浜で21~23日に開催された自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」で、AI(人工知能)にコンピュータ―を活用した設計支援ツール「CAE」を組み合わせるなど、先進的な取り組みに注目が集まった。出展各社の最前線に迫った。
短時間で性能評価
トヨタ自動車の子会社でIT事業を手掛けるトヨタシステムズ(名古屋市中村区)は、製品設計時に短時間で性能を評価できるようにするサービス「3D-OWL」を展示した。従来の解析データや実験結果に加えて、3次元形状も独自のAIエンジンに学習させて、性能を予測するサービスだ。
従来は、スーパーコンピューターで長時間の計算を行っていたが、汎用パソコンで高速で高精度に解析できるようにした。空力解析の事例では、16.3時間を要する解析の時間を1分まで大幅に短縮できるという。同社シミュレーションシステム部の石塚貴義氏は「汎用パソコンで安価に導入でき、製品性能を予測できることが売り」と話す。
空力を高速に予測
一方、CAEにAIを組み合わせたサービス「RICOS Lighting」を披露したのが、RICOS(東京都千代田区)だ。「機械学習アルゴリズム」で車体の空力性能に関するシミュレーション結果を高速で予測できるアプリケーションで、そのアルゴリズムには、物理現象の特性を組み込んだ。
例えば、車体の空力性能の評価で威力を発揮。約10時間かかる空力のシミュレーションを短縮し、15分で解析できる。ボディー表面の空気がどれだけスムーズに流れるかを表す空気抵抗係数「Cd値」の誤差はわずか。今後は、シミュレーションできる種類を増やす方針で、電子部品の熱解析などにも適用していきたい考えだ。
考える設計を追求
「考えるCAE」をテーマに展示したのが、製品の設計・開発プロセスを総合的に支援するNewtonworks(ニュートンワークス、同中央区)だ。
同社は「ブラックボックス」になりやすい解析工程を可視化し、設計者が考えながらCAEに取り組めるよう後押ししている。形状だけではなく、機能でシンプルに製品を考える設計手法、「1DCAE」を忠実に具現化したCAEツール「SimulationX」を提供。同手法に関するノウハウを提供するなど教育面のサポートにも力を入れている。
自動車の製品・設計開発工程にイノベーションをもたらす各社の挑戦から、今後とも目が離せない。