2025.07.25 【半導体/エレクトロニクス商社特集】エレクトロニクス商社の動向 トランプ関税の影響懸念 顧客の課題解決など強化
マクニカが展示会に出展した自動運転車両などはソリューションの強化を示す好例だ(7月、東京都)
エレクトロニクス商社では、産業機器向け半導体や工場自動化(FA)製品などの在庫解消状況に加え、前年来、米関税政策が考慮すべき材料として挙がってきた。国内の商社経営トップが関税を巡る顧客の動きについて「在庫はおおむね解消したが、様子見の傾向がある」と指摘し、外資系商社の日本代表も「市況の鈍化へとつながることを懸念している」と述べる状況。なお、半導体メーカー側ではコンシューマー製品などで駆け込み需要もあったとする。
米国時間の22日には米国政府が日本から投資を受け入れる一方、日本に対する25%の相互関税を自動車も含め15%に引き下げることで合意したと発表。鉄鋼製品とアルミニウムを対象とした50%関税は変わらず、鉄鋼製品の関税は白物家電など派生品を含み適用範囲が広いが、不安定な状況にひとまず区切りが訪れることに期待が集まる。
振り返れば、エレクトロニクス商社上場20社の2025年3月期(24年4月~25年3月期)連結決算は半数が増収。主要20社の25年3月期合計の売上高は前期からほぼ横ばい(0.7%増)。営業利益(19社)は同21.7%減。純利益の増益は8社。
この時点の26年3月期予想は20社合計で売上高が前期比1.3%増、営業利益(19社)は同0.1%減、経常利益は同0.1%減、純利益は同7.1%減を見込んでいる。
商社は顧客の在庫解消や関税交渉の進展を待つだけの姿勢ではない。より長期の視点でシリコンサイクルとも呼ぶ半導体需給の周期的変動や半導体メーカーの再編、直販傾向に対し、物販に加え製品やサービスを組み合わせて顧客の課題解決を図るソリューションや電子機器製造受託(EMS)、成長市場のインドについても海外展開の強化を進める。
最大手マクニカホールディングス(HD)はサイバーセキュリティ事業でサービスを自社開発するほか、アジア、中東に加えてアフリカで各国の市場特性に合わせたセキュリティー製品を提供。国内では自動運転電動バスの実証実験を増やし、定常運行も広げている。
レスターは、前年度にEMSがスマートフォン新機種への搭載効果やタブレットなどの民生向けが好調に推移したことで増収。システムソリューションは放送関連向けや決済端末などのシステム機器の低調などが響いたが、エコソリューション事業は新電力における電力販売先の拡大と国内外での太陽光発電所の拡大や電力販売契約(PPA)の新規契約の増加で増収となっている。
加賀電子も前年度、EMS事業で車載向けおよび医療向けが堅調に推移し、産業機器向けが回復したこと、在庫調整局面にあった空調機器向けも緩やかな回復傾向が持続し増収となった。
インド市場に進出
海外展開に目を向けると、インドについては半導体材料、製造装置、部品メーカーと利用企業がASEANに続き進出を拡大。商社も展開を急ぐ。玄関口としてシンガポール拠点を活用するほか、マクニカHDは5月の会見で「今後は車載系もさらに伸びる」(原一将社長)として同国の半導体市場の年平均成長率(CAGR)を10%と見込み、南西部カルナータカ州にある産業集積地ベンガルール市の既存拠点を「マクニカ・サイテック・インディア」として前年に法人化。主に半導体などの仕入れと販売を手掛ける。従来の課題であった水道、電気などの社会インフラは改善傾向にあり、半導体メーカーがさらに進出してゆくとみる。
FA製品の例としては、カナデンがベンガルール市に「カナデン・ソリューションズ(インディア)」を25年に発足。守屋太新社長は同国の標準規格局(BIS)の認証制度強化の影響で日系企業が現地生産を加速すると指摘。FA部品に加え製造装置、モノのインターネット(IoT)向けソフトウエアを導入する。
旺盛な引き合いの背景に、中国とも異なるインド現地企業の商習慣に加え、製造業はもちろんソフトウエア産業も日系製造業の求める品質や体制が整っていないことがある。
なお米国との摩擦が懸念材料の中国についても、巨大市場に引き続き商機をみる商社は少なくない。マクニカHDは中国特化戦略を掲げ、中国政府の国産半導体使用の方針を踏まえて、欧米製半導体を取販売できない領域に中国市場向け半導体を取り扱う。
FA製品も、例えばRYODENは中国向け売上高が25年度も過去最高を更新する見通し。工作機械向け数値制御(NC)製品、半導体製造装置向けシーケンサーやサーボが堅調だ。
日本国内向けに関しても先端半導体製造装置では大きな動きを示唆する商社、部品メーカーが複数あり、2ナノメートル以細の製造プロセスがいよいよ可能性から現実へ移りつつあることがうかがえる。