2025.11.27 富士通、海藻の「ブルーカーボン」を高速・高精度に定量化 海洋デジタルツインで環境保全と脱炭素に貢献

海洋デジタルツインの構想と開発技術

 富士通は26日、海洋の状態をデジタル空間上に再現する「海洋デジタルツイン」技術を活用し、海藻や海草による炭素吸収量、いわゆる「ブルーカーボン」を迅速に高精度で定量化する新技術を開発したと発表した。従来の人手による潜水調査に比べて 100倍の速度で、85%以上の認識精度を実現したという。

 開発したシステムは、海流や地形の影響を受けやすい海中で、プラスマイナス50cm以内の位置精度で安定的に航行することが可能な「水中ドローン自動航行制御技術」と、海中に群生する海藻・海草の種類と被度(海底を海藻や海草が覆っている割合)を85%以上の精度で識別・定量化する「藻場定量化技術」、藻場の回復・保全施策を提示前に事前検証できる「藻場創出シミュレーション技術」で構成。これらを組み合わせ、1haあたり約30分で計測・定量化ができるようになった。

 実証では、同社は一般社団法人宇和海環境生物研究所、愛媛県漁業協同組合吉田支所、宇和島市と連携し、南予の宇和海で同システムを用いたブルーカーボンの定量化を実施。その結果、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE技術研究組合)によるブルーカーボンクレジットの認証申請で、95%の高認定率での許可を取得し、技術の実用性と有効性を確認した。

 今後、洋上風力発電や海洋インフラ建設などで必要となる環境影響調査や工事後の生態系状況のモニタリングにも応用を検討しており、海洋を起点とした環境と経済の好循環モデルの構築を目指す。