2025.12.03 パナソニックHD、ソリューション事業を成長の原動力に DC向け蓄電システムは8000億円規模へ

「ソリューション領域で成長を目指す」と語る楠見雄規グループCEO

「DC向け蓄電システム事業で業界をけん引していく」と話すパナソニック エナジーの只信社長「DC向け蓄電システム事業で業界をけん引していく」と話すパナソニック エナジーの只信社長

 パナソニックホールディングス(HD)は2日、オンラインで「パナソニックグループIR Day 2025」を開催、今後パナソニックグループの成長をけん引するソリューション領域における事業戦略を説明した。

 楠見雄規グループCEOは、「注力するソリューション領域には確固たる強みの事業があり、稼ぐ力を高めるポテンシャルにある」と語った。

 当日紹介した重点ソリューション事業は、「データセンター(DC)向け蓄電システム」、「建物ライフタイムバリューの向上」、「BlueYonderのSCMソフトウエア」の三つ。

 パナソニック エナジーの只信一生社長、パナソニック エレクトリックワークス社の大瀧清社長、パナソニック コネクトの樋口泰行プレジデントが、具体的戦略を説明した。

 「(パナソニックグループには)グローバルでトップシェアの事業は多いが、依然としてハードウエア売り切りのビジネスも多く、持続的に顧客の収益に貢献するには強化の余地が大きい。三つのソリューション事業についてはこれができつつある」(楠見グループCEO)とし、今後収益を伴った事業成長への大きな期待を寄せる。

AI時代を視野に供給力を強化

 生成AI(人工知能)による市場成長が加速する中、DCの消費電力増大に対する高度な電源ソリューションへの要求が拡大している。また急増するAIサーバー領域では従来の集中型電源(UPS)からBBUの採用が増大している。

 こうした市場の動きに合わせ、パナソニック エナジーでは、供給体制の強化と次世代に向けた提案力・開発力の強化を進める。28年度にはAIデータセンター向け蓄電システム事業の売上高を8000億円規模(25年度比約3倍)に高める。

 同社の只信社長は「電源ソリューションへの要求が高まる中、独自の強みを進化させ、ソリューションの提案力と供給力で『お役立ち』を最大化させていく」と説明。さらに「目指す姿は、安全な電池を核とした電源システムを提供するDC向け電源ソリューションプロバイダー」(只信社長)と強調。「提供価値として高度化する顧客課題への先行的なソリューション提案と、需要の急増と変動に応える城南な供給力を兼ね備え、引き続き業界のイニシアチブを堅持する」(同)との考えも示した。

 同社の強みは、業界リーダー(ハイパースケーラー)との強い顧客基盤と、顧客課題を解決する設計提案力、性能・安全性・信頼性を高度なモノづくり力で擦り合わせ実現する提案商品の具現化力という三つだ。

 強い顧客基盤の面では、これまでハイパースケーラーとの強固な信頼関係を築いており、分散型電源が普及する以前より、顧客と開発を進め、業界に先駆けたソリューションとして実現する点が高く評価されている。「この分野では25年現在で8割程度のシェアを獲得できる見通し」(只信社長)という。

 設計提案力では「高度化する顧客の電源課題を先読みし、他社に先駆けて必要とされる機能から仕様に落とし込んだシステム提案を継続的に行い、業界をリードしている」(同)。システムを熟知しているからこそ、セルや電源ユニットなどのスペックを自ら決定し最適な形で統合するという開発・設計力を発揮できる。

 提案力の具現化では、特にサーバールームに求められる最高レベルの安全性に対応するため、これまでの電池事業の経験に裏打ちされたセル単体の品質や安全性に加えて、モジュールとしても特許技術による安全機構を備えた商品に仕上げている。

電源システム分野で存在感高める

 「商品はセルからモジュールまでの一貫開発・生産体制をとっているため、お客さまの要望されるタイミングとボリュームで供給することを可能としている」(同)点も大きな強みだ。

 事業規模8000億円達成に向け、「既存商品の需要急増にしっかり応えるとともに、次世代商品であるキャパシタを使用したCBU(キャパシタバックアップユニット)、電源専用ラック向け分散型電源(BBU)を市場導入することで成長を図っていく」(同)方針だ。

 生産については、日本と北米の既存拠点を活用して拡充することで効率的な投資を実現し、顧客の求めるスケーラブルな供給力を獲得する。

 日本では、セル生産能力を28年度に25年度比で約3倍に増強する。既存拠点でのライン拡充はもとより、車載用ラインの改造も進めており、26年度第1四半期からの生産を予定している。

 北米では将来の需要拡大や、供給網整備に向け、車載拠点であるカンザス工場の一部活用を検討している。

 モジュールについては、メキシコ工場の既存ライン増強と第2エリアの新設を進め、生産能力をさらに高める。グローバルな供給体制を効率的に整備することで、急増する需要に柔軟かつ迅速に対応する。こうした拠点の拡充に必要な投資額については、「3桁億円の前半」(只信社長)との説明にとどめた。