2025.12.08 近畿総合通信局、万博で活用した通信技術 応用へ意欲

大阪市内で開催された「電波有効活用セミナー」

セミナー会場に展示されたWPTS 関連のデバイスセミナー会場に展示されたWPTS 関連のデバイス

 総務省近畿総合通信局は5日、大阪・関西万博で活用された最新の通信技術を将来に応用するための「電波有効活用セミナー」を大阪市内で開催した。会場とオンライン合計の参加者は236人。セミナーでは、野水学局長のあいさつに続き、五つのテーマで7人が今回の万博で披露した技術を紹介。今後の計画などについて説明した。

 同省総合通信基盤局電波部の小川裕之電波政策課長は、大阪・関西万博での電波の利活用について振り返り、同省が展示したポスト5G(高速通信規格)の技術「Beyond 5G readyショーケース」を紹介したほか、会場で用いられた各種無線システムと今後の取り組みを紹介した。

 京セラコミュニケーションシステムの技術開発センターエキスパートの赤嶺維彦氏は、シグネチャーパビリオン「いのちの未来」の館内に構築したローカル5G(L5G)網で音声ガイダンスの提供や多接続環境構築への挑戦などについて説明した。

 「L5G活用の通信とロボット」のテーマでは、NECネッツエスアイの織田和彦主席主幹とANA発のスタートアップ企業avatarin(アバターイン)ソーシャル・ソリューション部の筒雅博部長が登壇。織田氏は、どこでも電源を入れるだけで基地局となる一体型5Gシステム「HYPERNOVA」について解説。イタリア館での実証例を紹介した。筒氏は、通信型遠隔AI(人工知能)ロボット「newme(ニューミー)」を紹介し、「アバターロボットにとって、5Gは最適な通信インフラ。今後とも通信への需要が高まる」と語った。同技術は、国土交通省の空港業務の生産性向上に関する技術開発・実証にも採択されている。

 NECネッツエスアイとアバターインは、東京大学や栃木県とともに、万博会場のEXPOメッセ「WASSE」でデモンストレーションを行った。

 また、長距離ワイヤレス給電の万博展示について解説したのは、京都大学発のスタートアップ企業Space Power Technologies(スペースパワー・テクノロジーズ)の古川実社長。同社は、空間伝送型ワイヤレス電力伝送技術(WPT)の開発に従事。万博会場では、大阪ヘルスケア館でデモを実施した。古川社長は「スマホを机の上に置くだけで充電できる技術と説明すれば、顧客はみんな驚いていた」と語った。

 ゼンハイザージャパンのプロオーディオ部門でエンジニアを務める藤井宏幸氏と、シュア・ジャパン市場開発部門マネジャーの井上直行氏は、それぞれのWMAS規格に対応した次世代ワイヤレスマイクの実証実験について報告。ゼンハイザーはドイツ館、シュアはEXPOアリーナなどの3会場を舞台に、合計6件のイベントでテスト運用などを実施した。

 野水局長はあいさつで「万博で展示の技術は一過性で終わらせないで」と語ったが、今回、各社は将来の利活用に向けての意気込みを強調した。