2026.06.04 未来のメディアを支える最先端技術に熱視線 「NHK技研公開2026」に迫る

開催された「NHK技研公開2026」

会場で注目を集めたライブ出力対応の「15K360度カメラ」会場で注目を集めたライブ出力対応の「15K360度カメラ」

「NHK TECH EXPO2026」では、動画編集業務を効率化するアプリ「TORCH」が最優秀賞を受賞した「NHK TECH EXPO2026」では、動画編集業務を効率化するアプリ「TORCH」が最優秀賞を受賞した

 NHK放送技術研究所(NHK技研、東京都世田谷区)は、最新の研究成果を一般公開する「技研公開2026」を開催した。今回のテーマは「拓(ひら)く、支える、これからも」。5月28~31日にNHK技研で行われ、放送メディアの可能性を広げる多彩な研究成果や体験型展示など計24件が集結。没入感を高める映像技術や人工知能(AI)を活用したコンテンツ生成技術などが来場者の注目を集めた。

 NHK技研はメディア環境の変化や技術動向を踏まえ、目指す未来を示す「Future Vision 2030-2040」を24年度に改訂し、「イマーシブメディア」「ユニバーサルサービス」「フロンティアサイエンス」を研究開発の重点領域と位置付けた。今回の技研公開は、こうした領域の成果などに触れる機会となった。

高精細カメラで没入感を向上

 イマーシブメディアは、没入感あふれるメディア体験を追求する領域で、自然な3次元映像を再現するライトフィールド方式のヘッドマウントディスプレーなどの成果が紹介された。

 会場で存在感を放った成果の一つが、ライブ出力対応の「15K360度カメラ」だ。具体的には、映像の没入感向上を目指して8K×8K解像度のイメージセンサーを2枚合成し、シームレスに映像を投影する360度カメラを開発した。リコーと共同開発した二眼屈曲光学系を採用し、プリズムによって光路を曲げることで、レンズ間距離を極限まで短縮した。撮影映像の15K解像度でのライブ出力にも対応している。ヘッドマウントディスプレーなどを用いた撮影現場での映像確認や、映像全体から一部分を切り出し、2Kなどの番組制作に活用することも可能だ。

AI活用の手話CGも紹介

 ユニバーサルサービスの領域では、AIを活用して「手話CG(コンピューターグラフィックス)コンテンツ」を自動生成する技術が目を引いた。

 CGキャラクターが手話を担うことで、全ての人が必要な情報にアクセスできる「情報アクセシビリティー」を高めることが可能だ。音声をテキストデータに変換することなく、音声から直接、手話単語列へ翻訳する。従来は難しかった音声特有の抑揚や間も反映した手話CG翻訳の実現を目指している。

 フロンティアサイエンスの領域では、フルカラー透明ホログラムなどを展示した。特別な眼鏡を使うことなく、奥行きの深い範囲に高精細な3次元映像を表示できる点が特徴だ。RGBの三色光を異なる方向から重ねて照射することで、フルカラー表示を実現した。

「NHK TECH EXPO2026」も開催

 同じ会場では、放送・デジタル・視聴者サービスの手法など、幅広い技術分野の取り組みを紹介する「NHK TECH EXPO2026」も開かれた。NHK技研での開催は初の試みで、多くの来場者でにぎわった。「つながる知恵、ひろがる技術」をテーマに、AIやクラウドを活用し番組制作や緊急時の報道業務を革新するシステムなどを紹介した。

 NHK TECH EXPOは、放送現場から生まれたアイデアや技術の取り組みを評価し、今後の展開や現場への還元につなげることを目的に表彰を行っている。今回の最優秀賞は、スポーツの中継映像をAIで解析し動画編集業務を効率化するアプリ「TORCH」が受賞した。優秀賞には、スポットライトとフラッドライトを1台で切り替えられるハイブリッド型のフルカラーLEDライト「Hybrid Super LEDライト」、奨励賞には河川監視カメラ自動収録システムが選ばれた。