2026.08.13 アジアのモバイル産業、30年には1.4兆ドル規模へ GSMA が予測

GSMAは、アジア太平洋地域の5G普及には通信事業者の設備投資増が必要と提言(写真:GSMAのレポートより)GSMAは、アジア太平洋地域の5G普及には通信事業者の設備投資増が必要と提言(写真:GSMAのレポートより)

 通信業界の国際団体GSMA(本部・ロンドン)がまとめたアジアモバイル産業の市場予測「The Mobile Economy Asia Pacific 2026」によると、アジア太平洋地域のモバイル産業は、高速通信規格5Gと人工知能(AI)の普及を追い風に成長を続けており、2025年時点でモバイル技術・サービスが地域経済にもたらす付加価値は約1兆ドルに達した。

 これは域内GDP(国内総生産)の5.9%に相当し、30年には1兆4000億ドル規模へ拡大する見通しだ。同地域では、人口の98%がモバイルネットワークのサービスエリア内にあり、通信インフラの普及は世界有数の水準にある。

 特に5Gの導入が急速に進んでおり、30年までに接続数は15億件に達し、世界全体の約4分の1を占める見込み。こうした5G接続の拡大には、通信事業者による設備投資が必須だ。GSMAは25年から30年にかけて通信事業者による設備投資は、2000億ドル以上を見込む。

 さらにGSMAは、日本、韓国、オーストラリアなどを含む先進アジア太平洋市場では、30年時点でモバイル接続の90%が5Gになると予測している。

 レポートは地域別の特徴として、先進国市場では5Gの高度利用と企業向けサービスが成長を牽引する一方、東南アジアや南アジアではモバイルブロードバンドの拡大やデジタルサービス利用の増加が市場拡大の原動力になっていると指摘する。5Gの整備が進むことで、製造業や物流、金融、医療などの幅広い産業でデジタル化が加速し、経済全体の生産性向上が期待されている。

 また、通信事業者は従来の通信サービス提供に加えて、AI時代に向けたデータ活用やクラウド、コンピューティング、セキュリティーなどの新たな事業領域へ進出している。5GネットワークはAI活用の基盤として位置付けられ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支える重要インフラとなりつつある。

 一方で、AIの普及やオンライン取引の拡大に伴い、詐欺やサイバー攻撃への懸念も高まっている。GSMAは、デジタル社会の持続的な成長には「デジタルトラスト(信頼性)」の確立が不可欠と指摘した。被害発生後の対応から事前予防へと重点を移し、通信ネットワークやサービス設計の段階からセキュリティー対策を組み込む必要性を訴えている。

 レポートは、アジア太平洋地域が今後の世界のモバイル市場をけん引する存在となり、5GとAIを核としたデジタル経済の成長センターとして重要性を一段と高めるとの見方を示している。