2026.08.21 「細胞輸送」を高度化する「真空断熱セルポッド」開発 タイガー魔法瓶など、27年実用化へ

開発した「真空断熱セルポッド」

検体を容器に収めたところ
検体を容器に収めたところ

高度化する再生医療のニーズに応え、運用面の柔軟性・確実性に寄与する
 
高度化する再生医療のニーズに応え、運用面の柔軟性・確実性に寄与する  

 タイガー魔法瓶は再生医療分野における細胞輸送プロセスの高度化を目的に、Gaudi Clinical(東京都中央区)と共同で、ステンレス真空断熱技術を活用した小型医療検体輸送容器「真空断熱セルポッド」を開発した。

 2026年4月から実証実験としてテスト運用を開始しており、実証実験の成果をもとに両社は27年の実用化に向けて製品改良を進めていく。

 真空断熱セルポッドは、軽量化による細胞輸送の負担軽減や品質保証・温度管理の高度化に寄与する。

 軽量化により、個別の検体ごとの取り扱いや持ち運びやすさを実現する。従来の専用車両での輸送に依存せず、公共交通機関やハンドキャリーといった柔軟な輸送手段が活用できる。これにより、渋滞リスクの回避による定時性の向上、運用の効率化が実証されている。

 細胞輸送で重要となる温度管理では、実運用環境下での安定性を検証した。輸送には一定温度を維持するために潜熱蓄熱材を使用。

 直径約10cm、縦約18cmと小型で、容器・蓄冷材込みで700gの軽量を実現。内容物の温度は、20℃帯で24時間、5℃帯で11.5時間の温度維持を達成した。

 ふた内部には太平洋工業製の温度ロガーを内蔵。温度ロガーが備えるBluetooth通信機能によりスマートフォンと連携し、輸送中の温度データをリアルタイムで取得する。

 規定温度からの逸脱時にはアラートが発報される仕組みを採用し、データはクラウドに集約され、本部で一括・集中管理、輸送中の温度状況を可視化できる。

 従来の細胞輸送では、断熱輸送箱を用いることが多く、移動手段が限られる上、公共交通機関での持ち運びや医療機関内での運用で負荷が生じる場合があった。

 複数の検体を一つの容器で扱う運用(混載時)には、特定の検体の出入りに伴う不確実性やリスクが懸念され、高度化する再生医療のニーズに対し、運用面の柔軟性と確実性の両立が求められていた。

 実証実験では、再生医療における細胞輸送プロセス(採取・輸送/調製・納品)に真空断熱セルポッドを導入。

 従来の輸送方法で課題となり得る「温度管理」「持ち運びやすさ」「取り扱い負荷」について、実運用環境下で有効性を検証し、定時性の向上と作業負担の軽減、細胞取り違えリスクの低減につながる可能性を確認した。

 今回の取り組みは、タイガーが強みとする真空断熱技術を再生医療分野に展開するもの。今後も温度管理が求められるさまざまな領域で、新しい価値創出につなげていく方針だ。

 Gaudi Clinicalは、高度な医療技術を安全かつ持続的に患者へ届けるための社会的な基盤づくりを推進している。

 同社の飛田護邦代表取締役社長は「再生医療を一つの確立した医療として普及させるには、細胞の品質を維持したまま安全に運ぶ技術が欠かせない」とする。

 今回共同開発した小型の輸送容器は、従来の課題だった配送プロセスの効率化を大きく前進させる。

 持ち運びやすさと厳格な温度管理を両立した技術により、医療現場の負担が軽減され、よりスムーズな治療の提供が可能になる。

 「こうした一歩一歩の積み重ねを通じて、再生医療が地域社会で広く信頼され、誰もが当たり前に受けられる医療となる未来を目指したい」(飛田社長)考えだ。