2020.09.16 最新トレンド・レクチャー第7回「サブスクリプション」
サブスクリプション
「見放題」という文句に誘われ、動画配信サービスで海外ドラマにはまってしまった、電波新聞社の新入社員つぐみ。
ある日、それが「サブスクリプション」と呼ばれているサービスだと気がついた。
「サブスクリプションって何だろう?」「新聞記者なら、意味も知らずにサービスを使ってちゃダメだな……」と反省し、まずは先輩記者のカゲに聞くのであった。
カゲさん! さっそくですが「サブスクリプション(Subscription)」って何ですか?
そんなのわかるだろう。アレだよ、アレ。使い放題みたいなアレ。
カゲさん……。実は知らないんでしょう??
何を言うんだ!
わかってるんだけど、うまく説明できないんだよなぁ……。
つまり、知らないということですね(笑)。
最初から当てにしてなかったんですけど。
それなら、今日もドクターに聞いてみましょう。
ドクター、こんちは!
「サブスクリプション」って何ですか?
つぐみくん、「サブスクリプション」のことを聞きたいのかね。そんなのもうわかっとるじゃろう。
アレじゃよ。アレ。
なんと、ドクターも怪しい!
そんなことはないぞ。。
例えば、今、君たちがパソコンで使っているマイクロソフト社のExcel(エクセル)とかWord(ワード)のソフトウエアが、それなんじゃ。昔は、お店でパッケージとして買うモノだったんじゃよ。
え、お店で売ってたんですか!
つぐみの世代では知らないだろうな。
もちろん今でも売ってるけどな。
お店で売っているソフトウエアは、だいたいCDロムやDVDロムのパッケージで販売されておった。それを買って帰り、家や会社のパソコンにインストールして使っていたのじゃよ。
新しいバージョンが出たら、また買いに行きましたよね…。
ところが、家や会社のパソコンが高速回線でネットワークにつながり、インターネットが普及した。
そこで、ソフトウエア企業は、パッケージ販売ではなく、「使いたい人は使いたい時にうちのソフトウエアを使っていいですよ。
ただし、使った期間だけお金を払って下くださいね」というネットワーク経由で販売することを始めたのじゃ。
有名なところでは画像処理ソフトなどのアドビ社がそうでしたよね。
うむ。ソフトウエアをパッケージで売るのではなく、ネットワーク経由で提供して、一定期間使った分の費用を支払うビジネスモデルに変えたのじゃな。
今は、WordやExcelも一部はパッケージでも売ってるが、「Office365(オフィス365)」として定額利用料を支払う方式に変えつつある。
それじゃ、今、私たち利用者は「モノを買うのではなくて、一定期間利用する権利を買って使う」ようになったわけですか?
つぐみくんが、珍しく説明してくれたな。
サブスクリプションは「定額料金を支払うことにより、契約期間中、商品やサービスの利用が可能になるもの」だと思えばいいかな。
もちろん、今ではソフトウエアだけではないぞ。
●動画配信
Netflix(ネットフリックス)やHulu(フールー)、Disney+(ディズニープラス)など
●音楽配信
Spotify(スポティファイ)やApple Music(アップルミュージック)、Amazon Music(アマゾンミュージック)など
●動画配信本や雑誌読み放題
電子書籍サービスのKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)やDマガジンなど
この他、食品の宅配やカメラのレンタルなど、いろんな分野に広がっておるぞ。
ところで、サブスクリプションは、どういうメリットがあるのですか?
サービスを提供する企業側から見てのメリットは、何といっても「売ったら終わり」ではなくて、顧客と直接長い期間、つながることができることじゃろうな。
また、ユーザーがどういう使い方をしているか、どんなプロモーションが効果的かなど直接分析することもできる。
一方、サービスを利用する側から見てのメリットは、大きな金額を払わずに使い始めることができることかな。
サービスを気に入れば使い続ければいいし、嫌なら解約できる。ソフトウエアの場合、利用者がいちいちアップデートなどの管理をしなくても済む。
いつも最新状態のソフトウエアが利用できることも挙げられる。
「無料試用期間」があるサービスも多いですよね…。
うむ。最初は会員になってもらう。ここがけっこうキモじゃな。
会員になったらそのサービスを無料で使える。もう、それで十分なんじゃが、「これはいいな!」と感じてもらった会員を、より機能をアップした有料のサブスクリプションに移行させるというのがサービスを提供する側の戦略じゃな。
無料で、そのまま使っても十分だけど、その中で「さらに、こんな機能が欲しい」という利用者に「それでは月々1000円の有料サービスを……」と勧めるのじゃな。
わたし、いつも「無料ならいいよね!」と始めて、気が付くといろんな有料サービスに加入しちゃってて……。
もうサブスク破産しそうなんです!
つぐみの場合、怪しいコンテンツに眼がないからだろ~。
うるさい!(バキッ)
×●△☆※…
ただ、サブスクリプションにはデメリットもある。
まず企業側のデメリットじゃが、モノやサービスを一括で売るわけではない。
月々の金額もそんな大きなものはとれないから、収益化するまでけっこう時間がかかる。
また「利用者は「いつでもやめられる」から、魅力的な機能や、利用者側の立場に立った丁寧なサービスを提供できないと、バンバン解約される。
一方、利用者側のデメリットは、つぐみくんのような「いつの間にか月々の費用がふくれ上がっていた」ということもあるし、そもそも加入したために使わなくても利用料金は取られ続けるということもある。
だから利用する時には気を付けないといけない。
しかし、ビジネスの大きな流れとしては、サブスクリプションなんですかね?
カゲくん、新聞記者らしいことを言ったな。
「モノやサービスを買うのではなく利用するサービスを買う」という流れは続きそうじゃな。
消費者庁の調べによると、国内のサブスクリプション・サービスの市場規模は、2018年度で5627億3600万円。2023年度には8623億5000万円にまで広がると予測されておる。
(出典:消費者庁「サブスクリプション・サービスの 動向整理」)
サブスクリプションは、BtoC(企業対一般消費者ビジネス)だけではなく、BtoB(企業対企業サービス)でも当たり前になってきておる。
「クラウド会計サービス」や「Web会議サービス」などは、必ずといっていいほど最初の無料試用期間を経て、月々の定額支払いでサブスクリプション契約をするようになっておるからな。
どんどん成長していくと予想されているんですね!
わたしが、そのうちのいくらかを支払っているんです……。何だか、だんだん腹が立ってきたな。
腹が立ったら食べてストレス解消するのもよいかもな。
確か、焼肉やラーメンのサブスクリプションもあったはずしゃぞ。
ホントですか! すぐに加入しよっと!
イラスト ⓒくり ひろし