2020.09.11 【5Gがくる】<10>5Gが変えるコロナ後のテレワーク ②

 新型コロナ禍で余儀なくされているテレワークの早期実現方法として前回、「ワイヤレス化」を前提としたモバイルワーク導入と「フリーアドレス」への移行について解説した。

 フリーアドレスを分かりやすく言えば、場所(アドレス)を自由に移動しても即座に勤務ができる環境の整備のこと。それを場所を職場から遠く離れた住居にまで延長したものが「在宅勤務」になる。通勤による時間的損失やストレスから解放される在宅勤務は「業務効率化」や「オフィスコスト削減」に加え「通勤コスト削減」も実現できる。そのため、経営者としてもメリットは大きい。

 ところが、今までの日本はテレワークの普及があまり進んでいなかった。03年の政府による「e-Japan戦略Ⅱ」では10年までにテレワーカーを就業者人口の2割にするとしていた。しかし実際のテレワーク導入率は09年の新型インフルエンザ大流行によって一時的に増えたものの再び下降し1割のまま停滞。14年に「働き方改革」や「地域活性化」などで再び増加に転じ2割まで増えた時点で新型コロナが襲来した。

政府要請に程遠く

 その結果、皮肉にも導入率は3割近くまで増えたが、政府の要請であるテレワーク導入率7割には程遠く、まだこれからといった感じだ。どうして普及が進まないのか?

 その理由について筆者は①ワイヤレス化の遅れ②クラウド化の遅れ③ネットワーク帯域不足(低速度)④セキュリティへの不安⑤オンライン会議への抵抗⑥管理の難しさ-の六つに集約されるとみている。

 まず①の「ワイヤレス化」の遅れについては、モノづくりやサービスの現場は遅れている。半面でオフィスのワイヤレス化はWi-FiやノートPC、スマホの普及で7割ほどに達している。ならばオフィスで働く人のモバイルワークは今すぐにでもできそうだ。

 ところが、業務データのクラウドへの移行が進んでおらず、出先や自宅から業務データにアクセスできない。そのためモバイルワークができない。②の「クラウド化」の遅れだ。机上は旧態依然の書類の山、あるいは机上のPCの中にあるファイルの山といった状態だ。ではクラウド化ができれば解決するかと言えば、今度は動画はじめ大容量業務データのダウンロードができないなど、③のネットワーク帯域不足の問題が出てきてしまう。さらにデジタルデータを無線でやりとりすれば情報漏えいといったリスクも生まれる。④のセキュリティの不安が一気に広がる。これら②-④がいわゆる「デジタル化」の遅れだ。

普及を後押し

 その点、デジタル化に強い「5G」はテレワークの普及を後押しするのではないだろうか。特に、建物内などでネットワーク構築の自由度が高い「ローカル5G」は、テレワークには欠かせない企業プライベート網(ネットワーク)やプライベートクラウドを構築する際に相性が良い。

コロナ後のテレワーク

 同様の高速ワイヤレス「Wi-Fi6」に比べても、ローカル5Gは免許制ゆえに電波干渉が少なく安定かつ安全だ。オフィスやサテライトオフィスに導入すれば、快適なフリーアドレスを実現できる。地域BWA(広帯域移動無線アクセス)など地域のローカル5Gサービスが始まれば、社宅を含むマンションや一軒家での快適な在宅勤務が大きく普及するに違いない。(つづく

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉