2020.09.30 【電波新聞70周年特集】ヘルスケア25年には33兆円市場、機器のIoT化などが進展

遠隔医療など5GやIoTを活用したソリューションに各社が取り組んでいる

 ヘルスケア(公的保険外サービス)産業の市場規模について、経済産業省は16年の約25兆円から25年には約33兆円になると見込んでいる。

 少子高齢化に加え、長寿命化による「人生100年時代」においては、健康の維持がいっそう重要となる。また、ヘルスケア機器のIoT化など先端技術の活用も期待される。

 内閣府が7月31日に公表した「令和2年版高齢社会白書」によると、総人口における65歳以上の割合を示す高齢化率は15年の26.6%から20年には28.9%に増加。

 さらに団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる25年には30.0%に達する見通しで、3人に1人が65歳以上、約5.6人に1人が75歳以上という状況を迎える。医療・介護、福祉サービスなどの需要に対応できなくなる「2025年問題」が現実のものとなる。

 社会保障費に含まれる介護保険の給付額も膨らみ、高齢者が健康で元気に暮らし続けるための介護・福祉器具やサービスの需要が高まると見られる。

 高齢者が要介護に至らず、健康で元気に生活ができる予防対策や、介護保険を利用できる介護用品の充実、住宅リフォームへのニーズが高まりそうだ。

 IoTや5Gを取り入れる動きがヘルスケア産業でも活発化。

 今春、日本でも5Gサービスがスタートし、高速・大容量・低遅延といった特性への期待が高まるが、ヘルスケアでは遠隔医療への活用に各社が取り組んでいる。

 高精細な8K映像と組み合わせることで、医師が遠隔地からでも患者をより正確に診察可能になる。

 IoT化による情報活用もヘルスケア分野で進む。

 例えば、既にIoT便器が商品化されており、利用者の健康情報を取得し専用アプリを通じて記録できるほか、遠隔地で暮らす家族が利用者を見守る機能も備える。

 川崎重工とシスメックスが共同出資するメディカロイドは8月、国産第1号となる手術支援ロボットシステム「hinotori サージカルロボットシステム」の製造販売承認を取得、今月1日に保険適用となった。

 現在は米インテュイティブサージカル社が開発した「ダビンチサージカルシステム」が市場を独占している状況。

 今後、hinotoriにAI画像診断システムや8Kカメラ、顕微鏡、5Gによる遠隔診断治療、新素材体内分解性クリップ・ステントといった技術を加え、ダビンチに対抗していく考えだ。

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、今年、人々の暮らしや健康への意識は急激に変化した。

 不織布マスクの生産開始が話題となったシャープは今月、ヘルス(健康・医療・介護)事業を本格展開する方針を発表。医療・介護向けの機器およびソリューションにも注力していく方針を示した。

 非接触、密回避を狙ったソリューションの需要も高まっている。「ウィズコロナ」は数年続くとの予測もあり、ヘルスケアの新たな取り組みがさらに広がりそうだ。