2020.10.05 Let’s スタートアップ! スタディスト紙マニュアルの課題を解決!電子化マニュアルで企業の業務改善を推進
成長が著しいスタートアップ企業を取材し、新しいビジネスの息吹や事業のヒントを探る「Let’s スタートアップ!」。
今回は、BtoB向けの電子マニュアル作成・共有プラットフォーム「Teachme Biz」(ティーチミー・ビズ)を開発・提供しているスタディスト。
「Teachme Biz」は、業務マニュアルや手順書を作成・共有するプラットフォームサービス。2013年9月から提供を開始し、現在、2000社以上の企業が導入している。
会社設立の経緯やビジネスが軌道に乗るまでの苦労、今後の展開について朝倉慶子・広報室長に聞いた。
画像・動画を盛り込みコストも削減したマニュアル作成サービスを提供
どの企業にとっても、適切な業務マニュアルや手順書の導入は重要だろう。社員がスムーズに作業を進められ、業務の効率化や生産性の向上が期待できるからだ。
一方で、マニュアルや手順書作りに苦労する人は多い。例えば、文字だらけの手順書は分かりづらく、現場に敬遠されることが多く、認識のずれも生じやすい。
ただ、その解決のために画像や動画を使おうとすると、手間やコストがかかる。また、苦労してマニュアルを完成させたとしても、現場で使う機器やソフトウエアが変わると、また一から作り直さなければならない。
こうしたマニュアルの悩みや課題に着目したのがスタディストだ。
「Teachme Biz」では、画像や動画を使った業務マニュアルや手順書を、テンプレートに沿って簡単に作れることが特長になっている。
具体的な作成の方法はこうだ。まず、説明したい作業の手順に沿ってスマートフォンなどで写真や動画を撮影。その中から使いたい画像や動画を選び、作業の手順に沿って並べる。続いて、付属の編集ツールで、各画像や動画に作業の説明書きなどを加えていく。
画像は、強調したい箇所があれば「○」で囲ったり、不要なものが写っている場合はモザイクをかけて隠したりすることも可能。
動画であれば、強調したいコマで数秒間止めるストップモーションをかけられるほか、必要なコマだけを抜き出して画像として活用する機能も利用できる。
こうした画像や動画の編集作業では、複数のソフトウエアを開き、ソフトウエア間を行き来しながらデータを切り貼りすることが一般的だ。そのため、作業時間が増大し、作成者の負担につながることが多い。
しかし、「Teachme Biz」では、編集作業を一つのプラットフォーム上で行えるため、作業時間が少なくて済む。
また、作成した業務マニュアルや手順書は個別にアクセス権限を設定できるほか、配信して閲覧状況の管理や、マニュアルを使う社員の属性に合わせたトレーニングコースを設定・管理できる機能も盛り込まれている。料金は初期費用30万円、月額利用料10万円からだ。
「使われないマニュアルに光を当て、業務効率に生かしたい」が出発点
スタディストの創業背景には、鈴木悟史代表取締役が体験したマニュアル作りの苦労があったという。
鈴木は、もともとはインクスという製造業を中心にコンサルティングをする会社でコンサルタントとして働いていました。
その中で、お客さまにシステムを導入してもらう時に、かなり分厚い使い方のマニュアルを作ることがありました。その作業は膨大な数の画像を圧縮したり、レイアウトをまとめたりと大変な苦労だったといいます。
しかし、そうして作ったマニュアルも納品後にお客さまの業務フローが変わったりすると、使われずに棚でほこりをかぶったままになっていることが多々あったそうです。
そのことを目にした鈴木は、非常に残念な気持ちになったといいます。一方で、これを活用すれば、さらに企業の生産性も上がるとも思ったそうです。そこで、マニュアルに関する様々な課題を解決したいと考えるようになりました。
そうした中、2009年2月にインクスが民事再生となったことをきっかけに自分で会社を作ることを決意し、2010年3月にスタディストを立ち上げたのです。
鈴木は設立後にすぐビジョンとミッションを定めました。それは「知る、考える、作り出す喜びにあふれた知的活力みなぎる社会をつくる」というビジョン。「伝えることを、もっと簡単に。」というミッションでした。
この考えをベースに、鈴木が感じていたマニュアルの課題を解決するツールとして生まれたのが「Teachme Biz」なのです。
コードを書けない社長が二足のわらじで独学開発
会社設立後、業務マニュアルや手順書の課題を解決するサービスを開発することは決まった。しかし、その開発は一筋縄ではいかなかったという。
実は、スタディストの創業メンバー6人の中には、エンジニアが1人もいませんでした。全員がソフトウエア開発とは別分野の出身だったのです。鈴木も大学の建築学科出身でした。
アウトソーシングすることも検討したそうですが、「自分たちの作りたいものを作るには自分たちでやるのが一番いい」という鈴木の考えから自分たちで開発することを選びました。
ただ、当初はシステム開発に必要なコードなどを誰も書けなかったので、専門書を買ってきて、まずはプログラミングについて勉強するところから始めたのです。
しかし、それだけだと売上げがないため、昼間は得意なコンサルティングを行って収入を確保し、夜にシステム開発をする生活を長く続けたそうです。
大手金融機関との契約締結が飛躍のきっかけに
創業から約3年後の2013年9月、「Teachme Biz」は、苦労の末にリリースされた。しかし、事業はすぐに軌道に乗ったわけではなかった。
サービスの開始時にもPRを頑張ったのですが、BtoBのビジネスでいきなり多くの受注の獲得はできませんでした。
そこで、鈴木たちは、知り合い経由でいろいろな企業に頼み込み、試用してもらいながら、少しずつお客さんを増やすという活動が半年以上続きました。
そうした中、コンピュータ関連の雑誌に鈴木のインタビューが掲載されました。その記事を読んだ大手金融機関の担当者が、「Teachme Biz」に興味を持ち、連絡をくれたのです。
その金融機関は、別会社と合併したタイミングで、膨大な手順書を整備する必要があり、そのニーズに合致するということでサービスを導入してもらえることになりました。
金融機関は高層ビルに入る大手で、鈴木は「こんな大きなビルに入っているような会社が、たった6人のベンチャー企業が作ったサービスを本当に導入してくれるのだろうか」と半信半疑だったといいます。
これが大きな実績になりました。そして、その後の飛躍のきっかけになりました。
今後は様々な業界に特化したサービス展開を目指す
スタディストでは、今後どのような展開を考えているのだろうか。
まずは「Teachme Biz」をより多くの方に使っていただくことが目標です。
これには国内だけでなく、海外も含まれています。実際、現在は、東南アジアを中心に海外展開を進めているのですが、これを着実に実現していきたいと考えています。
その次としては、「Teachme Biz」で業界ごとに必要な機能が含まれたサービスを提供していく予定です。
現在の「Teachme Biz」は、「Horizontal (ホリゾンタル)SaaS」タイプのサービスです。「Horizontal」とは「水平」という意味です。つまり、業界業種に関係なく提供しているサービスなのです。
今後はそれだけではなく、「Vartical (バーティカル)SaaS」タイプのサービスを提供することを考えています。「Vartical」とは「垂直」という意味です。つまり、一つの業界に特化した、その業界ならではの課題を解決するサービスを提供していくわけです。
その手始めとして、小売業界向けのサービスを、この冬ごろに開始する予定です。その後、ほかの業界に向けたものもどんどん展開していきたいと考えています。
「ミッション・ビジョンに共感する仲間」に集まってもらいたい
スタディストが今求めているのは「ミッション・ビジョンに共感する仲間」だという。
当社では、エンジニア、営業、コンサルタントと、様々な職種で新しい仲間を求めています。
しかし、ただ単に仲間が増えればよいというわけではありません。私たちとしては、「当社のミッション・ビジョンに共感してくれる仲間」が重要と考えています。
これは、当社の考えに理解があれば、少々困難なことがあっても信念を持って働いてもらうことができるという理由からです。
そうした仲間を少しずつ増やしていくことがサービス向上や充実になり、会社の成長にもつながっていくと思っています。
- 社名
- スタディスト
- URL
- https://studist.jp
- 代表者
- 鈴木悟史
- 本社所在地
- 東京都千代田区神田錦町1-6 住友商事錦町ビル9F
- 設立
- 2010年3月
- 売上高
- 非公開
- 資本金
- 6億7594万円(資本準備金含む、2020年9月現在)
- 従業員数
- 110人(2020年9月現在)
- 事業内容
- マニュアル作成・共有プラットフォーム「Teachme Biz」の開発・販売