2020.10.21 【あかりの日特集】 ストック全LED化へ取組み活発今年度中にLED化率50%へ
環境に合ったあかりの提案もLED普及の鍵
新型コロナウイルスが、国内の照明市場にもじわりと影響を与えている。緊急事態宣言下となった4-5月には照明工事がストップするなど直接的な影響もあったが、ウィズコロナとなった現在は、用途や分野などで照明需要の明暗が分かれ始めた。日本照明工業会(JLMA)が掲げる、30年度でストック(既設照明)を全てLED化するという目標に向けて、業界を挙げて多方面からの取り組みを活発化している。
「今年度中には、ストックのLED化率は50%までいくだろう」。JLMAの内橋聖明専務理事は、LEDの普及状況に対しこう自信を見せる。
既にメーカー出荷の100%はLEDとなり、市場ではLEDが完全に主力照明になり変わった。一部の特殊用途に加え、白熱灯といった従来光源に対する根強い支持はあるため、完全に切り替わる状況には至っていないが、フロー(メーカー出荷)はJLMAの計画通りにLED化が進んだ。
課題はストックのLED化。これについても、8月末時点でのストックLED化率は48.3%とJLMAは推定。「今のところ順調」(平岡敏行会長)とする。
ただ、LED化率が50%を超えてからが問題だ。
ストックのLED化は、普及の初期段階では簡単に交換できる電球やシーリングライトなどから進み、非住宅分野でも様々な用途に対応したLED照明が製品化されたことで、新築物件を中心に導入が進んでいった。物件のリニューアルでも採用が進行している。
現在、住宅用では、手軽に交換できる箇所から、リフォームを伴う箇所(キッチン灯など)へと焦点が移りつつある。リフォームとなると照明単体の交換に比べて金額はかなりかかる。これがLED化の〝足かせ〟になると予想されている。
住宅だけでなく、非住宅分野のビルなどでも同じだ。LED化に積極的な企業であっても、テナントとして入居しているフロアのLED化には消極的。オフィスを引き払う際、原状回復させる必要があり、オフィス移転などのリスクがある企業にとってテナント入居フロアのLED化には抵抗が強い。ビルオーナー自身の意識を変える必要がある。
これからのLED化には、地球環境への配慮といった環境意識に訴えかけることも大切になってくる。政府は30年度に、13年度比で26%の温室効果ガス排出削減目標を掲げている。その達成にもLED化は不可欠な要素であり、一般消費者への啓蒙活動もJLMAにとっては重要になってくる。その一環がポスターコンテストや、コロナ禍で今年は実施できなかった街頭PRといったイベントになるわけだ。
SNSで情報発信
社会環境が変化したため、JLMAも啓蒙活動のデジタルシフトを強めている。JLMAは、フェイスブックとツイッターのアカウントを9月に開設。SNSでの情報発信を始めた。「若年層に向けて工業会の認知度を上げていく」(平岡会長)ことを狙ったデジタルマーケティングだ。
LED照明の多彩な情報をまとめたWebサイト「LED照明ナビ」も工業会のWebサイトに開設。アンバサダーに起用しているお笑いコンビ・パックンマックンのパックンを使った動画コンテンツなど、親しみやすい内容で一般消費者に向けて訴求している。
一般消費者向けでは、昨年から今年5月まで2回にわたり、NHKで放送するバラエティ番組の人気キャラクタ・チコちゃんを使ったWebキャンペーンを実施。照明に関する質問に正解した人の中から抽選でチコちゃんグッズがもらえるとあって、「若い方からの応募も多かった」(内橋専務理事)と認知度の広がりを実感している。
SNSは、当初来年3月末までに1万人のフォロワーを目標にしていたが、10月の段階で既に2万人を超えており、さらにフォロワーを増やしたい考えだ。アカウント開設時の9月14日から30日までは、「SNSスタートアッププレゼントキャンペーン」を実施するなど、フォロワー拡大に向けた施策にも積極的に取り組んでいる。「あかりの日」である10月21日から11月2日までも、あかりの日にちなんだ新たなキャンペーンをWeb上で展開する予定だ。
国内の照明市場は今後、右肩上がりの成長は見込みにくい状況だ。照明にとってもIoT化がキーワードになってくるとともに、HCLも外せない要素になる。コロナ禍で生まれた新たな需要に対応する柔軟性も照明メーカーには求められている。
IoT化では他機器に比べて半歩遅れている印象がある照明だが、コロナがもたらした社会環境の変化には素早く対応して、新たな需要をつかむことが、企業にとっての成長にもつながってくるはずだ。